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悲しみを乗り越えて
児童劇団『蕪っ子』(四国中央市)
(2004年12月号掲載) |
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今年で創立10周年を迎える児童劇団『蕪っ子(かぶらっこ)』は、県内でも珍しい子どもだけの劇団です。平成7年、学校週5日制が月2回になったのをきっかけに、「子どもたちが何か熱中できる学外活動を」と、旧土居町蕪崎地区の子どもたちが集まり「蕪崎児童劇団」として発足。毎年1回の公演を目指して蕪崎公民館で練習を重ね、今年は15回目の公演となりました。
1つの小学校区で始まった活動でしたが、公演を見た子どもたちが入団を希望して、隣の三島、川之江地区の子どもたちも加わるようになりました。対象は、小学1年から中学2年まで。創立10周年記念の今年の公演『天使は君のそばに』には、今までで最も多くの38人が出演。練習に励んできた成果を、舞台の上で精一杯に披露しました。 |
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| 人権フェアでの公演。のびのびとダンスを踊る団員たち |
今年7月、『天使は君のそばに』の台本が団員たちに渡されて、本格的に練習を始めようとしていた矢先のこと。同劇団の旗上げをし、脚本の執筆や演技指導のすべてを行っていた団長・和田庄男さん(当時50歳)が交通事故で他界。和田さんを失った劇団は、まったく先が見えない状態になりました。
和田さんは、若い頃から演劇が好きで、地元の劇団でずっと演劇に携わってきた人。自身が愛護班の会長をしていた時に、児童劇団の立ち上げを呼び掛けました。『林邦庄(くにあつ)』のペンネームで執筆する蕪っ子のための脚本は、出演する子が確定してから、一人ひとりの子どもたちの個性に合わせた役と出番をつくるもので、ほとんどがオリジナルでした。『天使は君のそばに』は、そんな和田さんの最後の作品。団を支えてきた和田さん家族や、和田さんの演劇関係の仲間からのはたらきかけもあり、「どうしても公演を成功させたい」というみんなの思いを実現させようと、練習を再開しました。
和田さんに代わって指導をしたのは、次女で高校1年の茜里(あかり)さん。一昨年まで団員として舞台に立っていた茜里さんも、教える側となったのは今回が初めて。高校の部活動とかけ持ちしながら、毎回練習に参加しました。茜里さんの温かい声かけや一生懸命な頑張りが、団員たちを勇気づけたと言います。また、和田さんの演劇仲間も、東京や今治、宇和島などから駆け付け、土日や公演前などに演技指導を行いました。
裏方の仕事は、団員の保護者で組織する『父母の会』が担当。発足当時から、交代で練習を見守ったり、会計のすべてを管理するほか、公演にあたっては、舞台衣装やポスターの製作、お弁当の手配などに当たってきました。衣装づくりは、団長からイメージを聞いて取り掛かっていたので、今回は「団長は、どういうふうにしてほしかったのかな」と試行錯誤しながら製作。団長がいない大きな不安の中、「絶対に成功する」という意気込みで一致団結し、少しずつ形にしてきました。 |
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終盤のワンシーン。
女神「心には、天使と一緒に
悪魔も住んでいるのです。
どちらの心を使うかは、
あなたたち次第なのです」 |
本公演を前に、12月5日の同市主催の「人権フェア」への出演が決定。練習中の同劇団を訪ねました。和気あいあいとした雰囲気の中、舞台稽古に入ると、団員たちのピリッとした緊張感が伝わってきます。「気がつけば団長の笑顔が浮かぶんです。そこにいるし、あそこにいるという感じで。子どもたちはそれを私たち以上に感じていると思う。思い出すのは笑顔。温かく包んでくれる人柄で、子どもたちの良い所を伸ばしてくれる人だった」と保護者たち。今回は記念公演ということで、歌やダンスも多く取り入れられていて、年齢の小さな子も多く、例年より練習量を増やして取り組んできました。
そして、人権フェア本番。衣装とメイクを済ませた子どもたちが、それぞれの出番を待ちます。『天使は君のそばに』は、生まれた時から不思議な力をもつ少女・忍が、友達や、子どもたちの願いを叶えようとする「不思議な森」に住む10人の天使たちに見守られて力を発揮し、山を守っていく話で、相手のことを思いやることや勇気を持つことの大切さを知っていくというもの。団員たちはライトを浴びながら、元気いっぱいに歌やダンスを披露しました。初公演が無事終わって、舞台裏で団員たちを迎えた茜里さんは、「自分の力だけではできないのは分かっていた。今日の公演ができるのは、遠くから指導に来てくれる人がいるから。今日の公演が終わって、ちょっと安心できた。すごい楽しみにしていたから…」と、目を潤ませながら話してくれました。
本公演は12月11日、土居文化会館ユーホールで行われ、会場を埋めつくす人が訪れました。劇中の挿入歌で、和田さんの長女・郁さんが作詞した『限りない旅立ち』では、【♪遠く遠く離れても心はいつもそばにあると
〜 今交わす言葉は『ありがとう、また会える日まで』】と歌われていました。大きく成長した『蕪っ子』たちへの、団長のメッセージが詰まった公演でした。アンコールで並んだ団員たちの涙が溢れて止まらない姿に、多くの人が胸を打たれました。 |
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出演者全員による、
劇中挿入歌『限りない旅立ち』のコーラスシーン |
蕪っ子の団員として活動してきて、「いろんなことがあったけど、友達も増えて、皆で頑張ってこられて良かった」(有村美咲さん=三島西中2年)、「団長に言われた、『自分のために頑張れ』っていうのを一番覚えている」(山中千瀬さん=三島西中2年)と、思い出を話してくれました。先輩である茜里さんは、「これからどうなるか分からないけど、皆には何かの形で演劇を続けてくれたらと思う」と言います。
団長を失った痛手は大きく、今後の活動については、今のところ何も予定がないとのこと。団長夫人・裕美子さんは、「初代の卒団生が、今大学3回生で、その子たちと今も交流があります。高校や大学で演劇をしている子たちが、いずれ帰って『蕪っ子』をしてくれないかなとか、いつかみんなで大人のお芝居ができたらいいねと前から言っていたので、それができるのを楽しみにしてるんです」と語ってくれました。 |