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【地域の情報】最新号
光あふれる授産施設
『ばっぽの家』(東温市西岡)
(2005年4月号掲載)
池に面した丘に立つ
『ばっぽの家』(写真右)と『アイセルプ』
 3月26日、温かな春の日差しの中、社会福祉法人馴鹿(となかい)が運営する知的障害者小規模通所授産施設『ばっぽの家』(東温市西岡)の落成式が行われました。落成式には、加戸守行・愛媛県知事や東温市市長をはじめ、福祉関係の方々ら多数が出席し、新しい施設の完成を祝福しました。
 新しい施設は、旧国道11号線の北に位置し、ツインドームや運動公園のすぐ近くにあります。池に面した小高い丘の上に立つばっぽの家は、白を基調にした明るい外観で、南(池の方)に面して窓が大きく取られています。中を見学させてもらうと、大きな窓が見えていた部屋は作業室となっていました。

作業室から外を臨む。
正面に見えるのはツインドーム重信

 ばっぽの家の歴史は古く、20数年に及びます。当時、愛媛県立第三養護学校の小学部に通っていた児童の保護者の人たちが、子どもたちの将来を考えて活動を始めたのが起こりです。『ばっぽ』という言葉はあまり聞き慣れませんが、お餅のこと。第三養護学校の先生が、田植えから始まり餅になるまですべてが手作りの餅にたとえて、保護者の人たちの活動に、『ばっぽの会』と名前を付けてくれたのだそうです。

 活動を続けて10年目に共同作業所『ばっぽの家』を開所し、高等部を卒業した子どもたちが通う場所ができました。ところが、旧重信町下林に土地を買って建てた作業所が、2年続けて台風の被害に遭って、土砂が流入して復旧困難になるなど、保護者の人たちにとっては厳しい運営が続いていました。

新しい『ばっぽの家』(正面より)
 そのような中、ばっぽの家の運営が(福)馴鹿となったことで、それを機に新しい作業所が建設されることになったという訳です。狭い借家での作業所運営が数年間も続いていただけに、通所者やその家族の喜びもひとしおです。

 ばっぽの家は、一般の職場では対応できないハンディを持った人たちのための施設。高等部を卒業してからの通所となります。創作販売事業、アルミ缶回収事業、冷蔵庫の規格外パッキンを、ゴムとマグネットの部分とに解体する事業を3つの柱としています。「少しでも工賃を上げてあげたい。世の中がそうだからといって、授産施設も工賃が下がるようであってはならない。もともと
作業風景=ばっぽの家作業室
低いのですから、せめて上げてあげたい。未知数ですが、頑張ります」と施設長の高本さんが思いを語ってくれました。

 新しい施設には、これまでばっぽの家に通所していた人が6名と、新たに7名が加わります。ほとんどが市内の通所者ですが、中には松山市や伊予市から通所してくる人もいます。

 ばっぽの家では、米作りもしています。初めての収穫となった昨年は、80坪あまりの土地から約120sの米が取れました。年末には感謝祭として地元の地域おこしのグループにも手伝ってもらって、餅つき大会を催しました。4月中には、鶏小屋も建てられることになっています。

食堂を飾る3枚の絵
 また、これからの施設運営には地域との関わりは欠かせないとして、前述の感謝祭の他、観桜会なども地元の人たちと一緒に行います。また、中期長期的にハンディを持った人への理解を深めてもらうために、子どもや学生の人たちに体験学習で来てもらうなど、施設との関わりを持つ取り組みを進めています。

 食堂に、大きな3枚の絵が掛けられていました。壁の1面が、それらの絵で覆い尽くされるほどの迫力です。色鮮やかな魅力ある作品に思えたので、作者はどのような方なのか尋ねてみると、今年度から通所することになっている方の作品だそうです。養護学校の時に美術の先生の指導を受けながら描いたものだと説明がありました。施設内を彩る絵画も種々用意されていましたが、落成式間近にこれらの絵を見た理事長の発案で、ここに飾られることになったそうです。



↑身体障害者通所授産施設『アイセルプ』
↓アイセルプで作られた木工製品
 (福)馴鹿には同じ場所に、身体障害者通所授産施設『アイセルプ』があります。アイセルプとは、アイ(=私)とヘルプ(=助ける)、セルフ(=自分自身)とを組み合わせた言葉で、自分を積極的に自立にもっていこうとの意味だそうです。高校を卒業して、一般の企業で雇用してもらえない人を対象にしています。前身は共同作業所『ひよこの家』で、保護者の人たちが立ち上げたものです。ばっぽの家よりも一足早く、8年前に法人の中での施設『アイセルプ』の運営にこぎ着けました。

 同法人常務理事の伊藤隆志さんに、お話を伺いました。
 「法人の名前の由来は、サンタクロースのそりを引っ張るトナカイです。ハンディを持った人に、サンタクロース的な役割を果たしたいという意味。

 共生とかノーマライゼーションとか言われますが、ハンディを持った人たちが一般社会に受け入れられる土壌はまだできていません。ハンディを持った人たちに関わって接してもらいたい。そこから始まると思っています。同情をするのではなく、少しでも理解をしてもらいたい。

 施設の主役は、ハンディを持った人たちであることを忘れることがないように、毎朝朝礼では『命を深く慈しみ、障害者の兄弟姉妹として自立を支援させていただきます』と、職員が基本理念を唱和しています。この気持ちを、常に噛みしめて運営していかなければと思っています」。

 伊藤さんは非常勤の理事として馴鹿に関わってきましたが、昨年にばっぽの家が新築されることになり、工事担当理事となったことから、毎日ハンディを持った人たちと接するようになりました。「親御さんたちの状況を見ていて、この人たちが頑張っているのに自分は何もしなくてもいいのかと…。障害を持った人たちとの直接的な関わりは1年ですが、人生において、このような仕事に関われたことは幸せで、ありがたいことですね」(伊藤さん)。保護者の方々の熱意と、周りの人たちの深い理解と協力で、新たな『ばっぽの家』がスタートしました。
■知的障害者小規模通所授産施設『ばっぽの家』
〒791-0205愛媛県東温市西岡乙3-4 TEL:089-990-1777

■身体障害者通所授産施設『アイセルプ』
〒791-0205東温市西岡乙3-58  TEL:089-955-0088

『授産施設』とは
 心身上の理由や家庭の事情によって、仕事に就くことが困難な人たちに、働くことや技能を身に付ける機会を与え、自立を助けることを目的とした施設のこと。一般企業では就労できない人たちのための施設です。
 授産施設は、生活保護法や社会福祉法、身体障害者福祉法や精神薄弱者福祉法によって定められています。

 平成12年に社会福祉法が改正され、小規模授産施設の経営を目的として、社会福祉法人格の認可要件が緩和されました。障害のある人たちの自立や自活を支えていくための場所として、保護者の人たちの手によって共同作業所が運営されてきたのが大半でしたが、法が改正されたことによって、社会福祉法人として作業所を運営することができやすくなりました。

 社会福祉法人の認可を受ければ、運営費、施設整備費、設備整備費などに対して、国庫から補助を受けることができます。また事業の安定性と継続性が図られ、社会的信頼性も得られるなど、法人化に伴うメリットも大きいと考えられています。一方、全体の7割を占めると言われる無認可の小規模作業所(共同作業所)は、地方自治体からの補助はあるものの国庫からの助成がなく、厳しい運営を余儀なくされているのが現状です。

 愛媛県内には、自治体や社会福祉法人が運営する授産施設が30カ所あります。内訳=【身体障害者授産施設】▽入所2カ所▽通所5カ所【知的障害者授産施設】▽入所3カ所▽通所12カ所▽小規模通所3カ所【精神障害者授産施設】▽通所1カ所▽小規模通所4カ所(うち1カ所は公的施設)。
 他にも、県が補助をしている共同作業所が49カ所(身体・知的23カ所、精神26カ所)、中核市の松山市が補助をしている共同作業所が11カ所あるほか、自治体からの補助を受けるに満たない規模の作業所もあります。

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