→【地域の情報】最新号
|
足の向くまま One Day Trip
香川県琴平町を歩く
2005年10月号掲載 |
|
今回は、なぜだか懐かしく感じる琴平町への旅です。R11号線で香川に入り、豊浜町でR377号線へと進路を変えて、山本町の田園風景の中をのんびりと車を走らせながら、琴平町へと向かいました。
琴平町に入って、今日の取材はこんぴらさんの周辺情報をと思っていたのに、道の角々に立つ駐車場の案内の人たちに上手に誘導されて、着いたところは土産物店裏の駐車場。「店のすぐ前が参道ですよ。杖と傘をどうぞ」と声を掛けられ、勧められるままに、あれよあれよと言う間に石段を上ることになりました。
 |
| 参道を走り抜ける園児たち |
「お参りに来た訳ではなかったのに」と思いつつも、一段一段上るごとに、「ここまで来てこんぴらさんにお参りしない方がおかしい」とさえ思うようになって、はや心は参拝者となっていました。杖を勧められた時には借りるまでもないと思っていたのですが、「御利益杖ですよ」との言葉に心が動かされ、借りていくことにしたのは大正解でした。日頃の運動不足で、すぐに足がくたくたになってしまって、すっかり杖に頼ることになりました。足をしっかりと踏みしめ、杖をつき、ゆっくりと上っていきました。
遠足なのか、保育園や小学生の子どもたちが大勢来ていました。なんと、元気なこと!かわいい声を上げながら、とっと、とっとと駆け上っていきます。琴平町に懐かしさを感じるのは、子どもの頃、幾度か来たことがあるからなのでしょう。小学6年生の修学旅行の時以来、○十年ぶりのこんぴらさんです。
御本宮までは785段の石段です。時々、参道の脇に段数が記されています。「えっ、あと500段もあるの!」と道のりの先の遠さを思えばちょっとしんどくなりますが、玉垣の文字を読んだり、奉納されている常夜灯を眺めたり、あちらこちらに鎮座する狛犬を観察したりしながら歩を進めて行きました。
 |
| さすがの風格の本宮 |
本宮までの最後の階段は、相当な傾斜と段数です。それでも、ここを上ればあの景色が眺められるのだと、幼い頃の記憶がよみがえってきました。登り切った所の正面に、本宮の社殿がありました。息を整え参拝を済ませて、広前の見学です。
拝殿の向かいには神楽殿が、左手には御社に渡る回廊が40メートルも続き、荘厳さを醸し出しています。広前の展望台からは、讃岐平野が一望できます。あいにくの曇り空で瀬戸大橋は見えませんでしたが、広々とした讃岐平野の景色を眺めるとしんどさも吹き飛びました。社殿をバックに、讃岐平野の景色をバックに、観光客らが思い思いに写真を撮っています。奥社へはさらに数百段の階段を上らなければなりません。小雨も降り出したので、今回はここで下りることにしました。
 |
| 讃岐平野の眺め |
石段を用心深く下りていると、上ってくる団体客とすれ違います。たいていのグループが、黄色い半被を着たガイドのおじさんに引率されています。このガイドさんの説明がまた面白いの何のって!思わず聞き入ってしまいます。あるガイドさんが、「下りてくる人は、いいお顔をしているでしょう?御利益を頂いたからですよ」と説明をしていました。丁度そこへ通り合わせたものですから、「私たちのことだ」と勝手に思うことにしました。これも、借りたあの杖のお陰でしょうか。ウィークデーでありながらも参拝の人の波はひきもきらずで、さすがに『こんぴらさん』だなあと思いました。 |
|
 |
| くすの木広場 |
階段を下りきってさらに進んで、『金陵の郷』へ。時代を思わせる風格有る店構えです。大きな藍染めののれんをくぐると、そこは『讃酒館』。大きな酒瓶がお出迎えです。一合桝1390杯分も入る大きな桝に、絶え間なく注がれていました。そこを通り抜けると、TVコマーシャルでおなじみの『くすの木広場』です。鎌倉時代と推定される大くすの木は、こんぴらさんの天狗が休息をしたと伝説が残っています。
白壁と瓦屋根の美しい蔵が、広場の周りを囲んでいます。元貯蔵蔵の『歴史館』、元仕込蔵の『文化館』を見学することにしました。館内は広々として、上を見上げると立派な梁が巡らされています。歴史館では桶や樽など古い酒造りの道具が展示されていて、人形が江戸時代の酒造りの様子を再現していました。見学コースは、順路を高くして樽の中まで見えるように工夫されていました。
 |
| 歴史館の中 |
文化館には、酒瓶やとっくりや種々の杯類がきれいに陳列されていました。また、造り酒屋の店先に吊してある杉玉に関するコーナーがあり、興味深く見学をしました。この杉玉は『酒林(さかばやし』
 |
| 金陵の「酒林」 |
と言うのだそうです。地域によって、また時代によって形が異なる様々な形の酒林が展示されていました。
金陵の郷の村長さんの話によれば、こんぴらさんにお参りに来る人(年間約300万人)の約1割がここを訪れ、そのまた1割が歴史館や文化館を見学するとのこと。くすの木広場は、町のイベントなどに利用されることも多いと聞きました。静かで落ち着いた広場にたたずむと、参道の喧噪が嘘のように感じられます。古い建物と、大きなくすの木。そしてモダンなレンガ色のタイル鋪装の広場。それらが素敵にとけ合った空間でした。こんぴらさんにお参りに行くならば、ぜひともお薦めしたい見学スポットです。
|
|
 |
| 当時の面影そのままに |
駐車場まで戻り、現存する日本最古の芝居小屋で国指定重要文化財の旧金比羅大芝居(金丸座)へ車で向かいました。あいにく今は改修工事中で、建物は保護ネットで覆われていましたが、中を見学することはできました。様々なメディアで紹介されている有名な建物ですから、知り尽くしているかのように思っていましたが、やはり実際に訪れて自分の目で見ると感じ方が違います。芝居小屋が持つ雰囲気に、一気に飲み込まれていきました。
正面の老松の大きな絵、左右の赤提灯、竹で編まれたブドウ棚と呼ばれる天井。気分はもう江戸時代です。舞台近くの天井からは、家紋の入った1メートル以上もあろうかと思われる大きな提灯がいくつも吊り下げられていて、さらに気分を盛り上げてくれます。
順路に沿って、花道を渡って見学を始めました。正面舞台には、回り舞台の装置やセリ上がりの装置もあります。舞台の裏手に回ると、そこは出演者らの控え室。壁の風合いも昔のままなのだろうと想像できます。
 |
舞台下の奈落
「回り舞台」や「せり出し舞台」の装置 |
舞台横の階段を下りて奈落へ。回り舞台がどのようにして回るのか、ここを見ればよく解ります。今でも人力で回しているそうです。花道の下では、整然と並ぶ床下の石積が見事です。興行の時には、大歌舞伎の役者さんたちがここを行き交うのでしょう。奈落への階段は狭く傾斜は急で、役者さんたちは重い衣装を身に付けて上り下りするのですから、さすが大したものだと思います。
客席は、舞台正面の枡席、花道両脇の席、さらに両脇の桟敷席、2階桟敷席もあります。周りよりも一段高くなっている桟敷席に座ってみました。舞台よりの最前列は、舞台とほぼ目線が合致し、臨場感溢れる芝居見物ができそうです。芝居見物でなくても、建物の見学だけでも十二分に見応えのある場所でした。
琴平町には、高さが日本一の『高灯籠』や金比羅宮の大祭の時だけ使用される屋根付きで橋脚のない『鞘橋』など、こんぴらさんの門前町として栄えた歴史を物語る文化財が多数残っています。
|
|
|
|
|
こんぴらさんで見かけた動物あれこれ |
◆本宮近くの階段下にお百度石がありました。亀の形をした台座(亀跌)の上に置かれています。亀跌は大名家のお墓などに見られます。
(→) |
◆階段を下りていると、どこからか『ガーガー』と声が聞こえてきました。その階段を下りきった所で声のする方を探してみました。覆い茂った木に隠れてしまいそうな小さな池があって、カモが3羽、ちょこちょこと忙しそうに、水に首を突っ込んでは泳いでいました。 |
◆ここは桜馬場から続く広場で、御厩(厩舎)前です。立派な厩舎には、神馬が2頭いました。奥の一頭はこちらを向いてくれていますが、近くの一頭は後ろを向いたままです。しばらく待っていましたが、とうとうこちらを振り向いてくれることはありませんでした。 |
◆その広場の南手の一角に、象の像が奉納されていました。子象くらいの大きさでしょうか。なぜここに象なのだろうと思いましたが、こんぴらさんが鎮座ましますお山は、『象頭山』であったことを思い出しました。山の形は、鼻の長い象の頭の格好に似ています。 |
◆桜馬場に続く鳥居の前には、こんぴら狗(いぬ)の像があります。江戸時代に、主に変わってこんぴら詣りをした犬とのこと。立て札には、首に下げた袋に初穂料と道中の食事代を入れて、飼い主が旅の人に犬を託し、無事代参を済ませた犬はふたたび旅をして飼い主の元に返った、とあります。いかつい顔の狛犬とは違って、何ともユーモラスな顔のワンちゃんです。参道脇の土産物屋さんの店先にも、愛らしい犬の置物がたくさん並んでいます。 |
|