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【地域の情報】最新号
ドイツとの交流のかけ橋
徳島県鳴門市『ドイツ館』ほか
2005年11月号掲載
 今年から来年にかけて『日本におけるドイツ年』が開催され、全国各地でドイツに関する幅広い分野の行事が行われています。今回はドイツ年にちなんで、鳴門市ドイツ館(徳島県鳴門市大麻町)に行って来ました。

 ドイツ館は平成5年に鳴門市によって建設されたもので、第1次大戦時にドイツ兵俘虜が収容されていた『板東俘虜収容所』の置かれていた地のすぐ近くにあります。ドイツとの文化交流と友好をはかることを目的とし、観光都市・鳴門を形成する建築物の1つとなっています。また、俘虜のドイツ兵と地域の人たちとの交流を知る場となっています。

ドイツ館正面入り口
▼当時を伝えるドイツ館

 徳島自動車道藍住インターを下りて、藍住町役場前の道(県道41号線)を北進すること10qあまり。道路左手の小高い丘に、美しいヨーロッパ風の建築物が見えてきました。中央に塔のある左右対称の白亜の館です。鳴門市と姉妹都市であるドイツ・ニーダーザクセン州リューネブルク市の庁舎を模してデザインされた建物だと後で聞きました。広い駐車場の一部は工事中で、道の駅『第九の里』(平成18年度開設予定)が建設されていました。

 駐車場から階段を上がると、そこはレンガ敷きの広場になっていて、回りの丘陵の緑とよく調和しています。半円形に張り出した玄関を入って、案内所に行きました。水兵服姿の係の人が出迎えてくれて、館内を案内してくれることになりました。まずはらせん階段を上がって、2階の見学からです。

 2階では、『板東俘虜収容所』が紹介されています。この収容所では、俘虜となったドイツ兵約5000人の内、松山
展示コーナーの入口
、丸亀、徳島に収容されていた約1000人が、大正6年4月から同9年1月までの2年9カ月余りを過ごしました。

 当時を模した収容所の門をくぐって中に入ると、中央に同収容所のジオラマがありました。兵舎の大きさからすると、かなり広大な敷地であったことが想像されます。数多くの兵舎とともに、ここにはボーリング場や商店街、製パン所や図書館、印刷所、音楽堂などもあったそうです。

 同館では、物を展示してパネルで説明するだけでなく、様々な手法で、どのような収容所であったのか、どのように暮らしていたのかを紹介しています。1/3サイズに作られた兵舎の中では、ミニチュア模型がまるで動き出すかのようにいきいきと日常生活の様子を描き出しています。またマジックビジョンでは、暮らしの一コマを切り取ってユーモラスに表現
板東俘虜収容所のジオラマ
しています。俘虜の身であることを悲観視せず、積極的に創意工夫をして集団生活を送っていたことがよく解る展示です。

 また展示のナレーションが、俘虜の視点からなされているのも興味深いところです。松江豊寿(とよひさ)所長の紹介コーナーでは、人柄がよく伝わるエピソードを交え、いかに所長が俘虜を人間として信頼し理解して収容所の運営に当たっていたかを述べています。松江所長や語学に堪能であった高木副官らの俘虜のプライドと自主性を尊重する管理体制は、俘虜の自由で活発な様々な所内活動をうながしました。


▼第九のふるさと

第九の演奏の再現コーナー
 鳴門市は、日本で初めてベートーヴェンの交響曲第九番が全曲演奏された地として知られていますが、大正7年6月1日に同収容所の催し物を行う兵舎(バラッケ第1棟)で、ドイツ兵によって演奏が行われたものです。音楽活動のコーナーでは、当時の楽器や初演時のプログラムも展示されています。鳴門市では毎年6月1日を『第九の日』と決めて、6月の第1日曜日に演奏会を開いています。今年は日本におけるドイツ年事業として、在日ドイツ人を迎えて大合唱が行われ、盛況を博したそうです。

 展示場奥の第九シアターでは、当時の演奏風景が再現されています。セーラー服など当時の衣装を着込んだ実物大人形による演奏が、午前10時から午後4時30分まで30分ごとに約15分間行われていて、私たちもベンチに腰掛けて、ナレーションや演奏に耳を傾けることにしました。スクリーンに投影される当時の写真も珍しく、短い時間ではありますが演奏も楽しむことができました。

前庭にあるベートーヴェン碑
 鳴門市とリューネブルク市は1974年に姉妹都市となり、国際交流を活発に行っています。その原点となるのが俘虜の人たちと地域の人たちとの交流で、その様子は、『地域社会との交流』のコーナーで紹介されています。板東の地域の人たちは、パン作りや畜産技術、西洋野菜の栽培、建築設計や音楽などを俘虜の人たちから学び、地域の人は俘虜のことを『ドイツさん』と呼んで親しんでいたそうです。

 1階のミュージアムショップでは、ワインやビール、バターをはじめ、お菓子やマスコット類など、ドイツにちなんだ物産が販売されています。また、休憩コーナーにはニーダーザクセン州の紹介コーナーもあります。

 ドイツ館では、受付で案内を申し出た人には、説明ガイドが付いて館内を案内してもらえます。団体の場合は事前に申し込みが必要ですが、個人の場合は受付時でOKです。ぜひとも、ガイドをして頂きながら見学をすることをお薦めします。ドイツ館のスタッフの人たちが着ている水兵服は、初演時を再現し『蘇る第九』のコンサートを行った時に、演奏者用にあつらえた物が使われているとのことでした。 


ドイツ橋
▼ヨーロッパの趣を伝える石積の橋
 ドイツ館のすぐ近くに、ドイツ兵が地元の人たちのためにボランティアで造った橋が残っているというので、見に行くことにしました。車で数分の所に大麻比古神社があり、社殿裏の庭池に小さなメガネ橋がかかっていました。また散策路の小川には、ドイツ橋と名付けられたアーチ形の橋が架かっていました。


▼交流のシンボル


 収容所の跡地は現在「ドイツ村公園」になっています。公園の奥に2つの慰霊碑が立っていると聞いていたので、見学とお参りに行ってきました。古くて小さい方は、1919年に俘虜の人たちが祖国に帰る前に、異国の地で病気などで亡くなった11人をまつるために造ったものですが、草に埋もれて、人目に付かなくなってい
俘虜の人達の慰霊碑
た時期があったそうです。収容所が第2次大戦後の引き揚げ者住宅として使われるようになってから、1婦人が慰霊碑の存在に気付き、地域の人とも協力をしあって清掃と献花を長年続けていました。そのことが新聞で紹介されて、ドイツ大使や総領事がお礼に訪れたのをきっかけに、この慰霊碑は日本とドイツの交流の象徴となりました。

 その後、元俘虜・ライポルト氏からの板東がどのように変わったのか教えて欲しいとの手紙に対して、板東の近況を伝える8ミリフィルムがドイツに届けられたことから、地域の人たちとドイツの元俘虜らの交流が40年ぶりに復活しました。ドイツ各地からたくさんの遺品や寄付が寄せられたそうです。それが、ドイツ館に数多く展示されていたという訳です。

 大きな新しい慰霊碑は、全国の収容所で亡くなった87名の合同慰霊碑で、1976年に建てられました。
■ドイツ館 ■住所:鳴門市大麻町桧字東山田55番地2
■電話:088・689・0099
http://www.city.naruto.tokushima.jp/germanhouse/

『バルトの楽園(がくえん)』のオープンセットを見てきました!!
 大麻比古神社の東隣に、東映映画『バルトの楽園』(2006年公開予定。主演・松平健)のオープンセットが建設中とのことで、見に行ってきました。11月10日から撮影に入るので、訪れた日(8日)は、セットの工事現場もすぐ隣のスタッフ用のプレハブ棟も大わらわの状況でした。衣装や小道具などが搬入されているのか、京都ナンバーの車が行き交っていました。


 敷地内に入ることはできませんが、一般道から板東捕虜収容所を再現し
たセットを見ることができます。建物の脇に何気なく置かれたバケツや桶や看板など小物の存在が、作り物のセットでありながら本物の味を出しています。裏側のない家や上部だけしかないレンガの煙突なども、いざカメラに収まると本物と何ら変わることがないのでしょう。 このオープンセットは、2006年春には、一般公開される予定になっています。



 
松江所長
『バルト』とはひげのことで、俘虜収容所であるのに彼らの自由な活動を可能にした、松江所長の信念を象徴しているのだそうです。松江所長は、両端がはね上がった八の字形の立派なカイゼルひげを生やしています。

 『バルト―』では、敗者への思いやりがあり、穏和で包容力に富んだ松江所長の人間味溢れる人柄、奇跡のような収容所と形容される板東俘虜収容所、そして俘虜らの音楽活動を通じての地域住民との交流が描かれます。マツケンこと、松平健さんが演じる『松江所長』が楽しみです。


 
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