2006年6月号掲載
ワインと日本酒 活躍する女性2人(四国中央市) |
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「こんにちは」。(有)谷井誠一商店(=四国中央市川之江町)の玄関を入ると、右手の大きなワインセラーが目に入りました。木箱や木製の棚には、ワインがたくさん並んでいます。ワインセラーは、大きなガラスの入った木製の引き戸で、明るく開放的で気軽にワイン選びができそうです。
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(有)谷井誠一商店
ワインアドバイザー・コンセイエ
谷井裕子さん |
同商店の奥さん・谷井裕子さんは、ワインアドバイザー(日本ソムリエ協会認定)、コンセイエ(フランス食品振興会認定)の有資格者。ご主人のおじいさんの代から始めた家業の酒店に、他のお店にはない何か特徴的なものをと考えた時に思い出したのが、学生時代に出掛けたヨーロッパ旅行で知った本場のワインの味。当時、日本ではおいしいワインを飲んだことがなかったけれど、ヨーロッパでは食事にワインは付きもので、本場の味はとてもおいしく、より食事をおいしくする飲み物だと感じたそうです。お洒落っぽさも気に入ってお店に置くようになりました。70年代後半の頃のことです。
最初はワインの銘柄もごく限られたものしか置いていなかったのですが、若い世代の人たちがそれを目当てに買いに来てくれるので、もっといろいろな銘柄のものを置いてみるようにしました。けれども田舎の商店ということで仕入れ先からはなかなか相手にされずに、苦労した時期があったそうです。「問屋さんを通じて入れてもらうのですがワインの扱いが不十分で、嫌だなと思ってもそれ以外に取り寄せる方法がない。またこちらもワインのことをあまり知らないから注文の入
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コンセイエとは、フランス語で『助言する人』。
ワイン選びの達人と認められた人だけに贈られるコンセイエのバッジです。 |
れようがない。この値段でこの位の味でと言っても、自分が銘柄も知らないので、どうしようもない状態でした」と谷井さんは当時を振り返ります。そのようなことがきっかけとなって、資格に挑戦することになりました。
はじめにチャレンジしたのが、酒店でお客様がワインを選ぶ際に説明や助言を行うワインアドバイザーの資格で、取得には2年かかったそうです。酒店の仕事をしながら家庭では受験期の子どもさんのお母さんであり、ご自身も合格を目指す受験生です。机の前に座る時間は取れないので、必要な事を紙に書いては家中に貼って覚える工夫をしながら勉強を重ね、ペーパーテストの方は見事1年目に合格。実技試験も、毎晩のようにテイスティングを手伝ってくれたご主人の協力の甲斐あって2年目には合格し、晴れてワインアドバイザーの資格を取得しました。
続いてコンセイエにも挑戦。コンセイエとはフランス語で『助言をする人』の意味で、フランスワインの販売に情熱を注ぐ達人として選出される資格です。こちらも2度目に合格し、提出したレポートは優秀賞(1200点中6点)に選ばれ、ボルドーに招待されました。資格を取ってからは、業者さんの方から商品の売り込みのファクスやメールがたくさん来るようになって、品揃えに苦労することはなくなったそうです。
ワインを知ってもらおうと始めたワイン会は、昨年の11月に100回を数えました。ワイン会では、いろいろな料理に合わせて、5〜6種類のワインが出されます。一緒に飲んでおしゃべりをして楽しみながら、ワインの飲み方や料理との相性を知る機会となります。肩の凝らないワイン会がモットーとのこと。料理は谷井さんの手作りです。

「『ワイン、美味しかったですよ』と言ってもらえる時が一番嬉しいですね。ワイン人口を増やすために始めたワイン会を今後も続けていきたいですし、できるだけ多くの人に飲んで頂きたいと思っています」(谷井さん)
ご主人と2人で制作している同商店のホームページはとても読み応えがあります。ぜひチェックしてみて下さい。ワイン会の情報も載っています。
【e-酒屋@四国】http://www.tany-net.com/ |
| 谷井さんのお店のHPの中に、注目のコーナーがありました。四国初の女性杜氏として株式会社篠永酒造(=四国中央市具定町)にお勤めの宇高育子さんが、蔵元で働く日々の様子を伝える『いくこの蔵便り』です。育子さんからメールで送られてきた情報を谷井さんがHPにしています。 |
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『森之翠』篠永酒造 杜氏
宇高育子さん |
次は、篠永酒造へ宇高育子さんを訪ねて行きました。明治初期の由緒ある建物の玄関を入ると、蔵の奥から頭にバンダナを巻いた育子さんがやってきました。杜氏として独り立ちして、すでに2シーズンを送っています。
杜氏さんになったきっかけを尋ねると、もともと手作りのものに興味があったのと大学で発酵学を学んでいたので、就職先を選ぶ時に自分が好きな職種を探している内に、手作りの酒造りが面白いと思ってこの道を選んだと答えてくれました。「日本酒が好きで、飲むのも好き」と育子さん。
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森之翠 山廃仕込み純米大吟醸
『育子の酒』
ラベルの文字は実家のお母さんが書いたもの。 |
最初に入った会社では、女性は直接酒造りには携わることができず品質管理の仕事をしていました。篠永酒造へ入社し、酒造りに携わるようになって今は9年目に入ったところです。当時、篠永酒造には岩手県から南部杜氏と呼ばれる杜氏さん(佐藤杜氏)が来ていて、育子さんは佐藤杜氏を師匠として酒造りを学びました。「佐藤杜氏は、『関東や東北では女の人でもどんどん蔵に入って、本気でやっている子はいっぱいいるよ。やる気があるのならやってみなさい』、と言ってくれて、それで私も入ることができたんです」と、酒造りに直接携わるようになったきっかけを語ってくれました。
「杜氏さんは何十年もの経験を持っています。技を全部教えてもらっている訳ではないけれど、経験のない私がそれを見させてもらえるのは贅沢なことで、勉強になりました。佐藤杜氏からは、『言葉では伝えられないこともあるから、よく見ておけよ』とよく言われていました」。
育子さんが始めて杜氏として独り立ちした時には、怖くて眠れない日が続き、一生懸命であまり覚えていないくらいだそうです。「毎日、毎日、様子を見て面倒を見ます。いいお酒になるように促してやると言われますが、去年なんかは促すと言うよりも、私の方が付いて行くみたいな感じでしたね。子育てにたとえられる通り、(お酒が)育っていって絞る時には、『卒業おめでとう』という気持ちでした。嗜好品なので、どのように評価されるかと思うとドキドキしました」
育子さんは、「必ず味に出るから」と言われた言葉を信じて、ていねいに心を込めてつくるとその気持ちは味に表れる、きめ細かく世話をすればそのような味になると常に思って酒造りに取り組んでいるそうです。「大失敗はないけれども、反省することは多い」と言う育子さんですが、妥協をせず、手を抜くことなく酒造りに打ち込んでいます。
「私は『森の翠』の味が好きでこの蔵を選んでいますので、味を守ることが大事だと思っています。前の杜氏さんがしてきたことを続けて、次にする人まで私がその味を続けていく、という気持ちで酒造りをしています。森の翠のファンの人が『佐藤杜氏とは味は違うけれど、その流れはちゃんとあるよ』と言ってくれたことがあって、それが心の支えになっています」
ご主人は別の酒造会社の社員さん。お酒の仕込みシーズンには、泊まり込みで世話に当たったり、休みも取れない日々が続く杜氏の仕事ですが、ご主人は育子さんのよき理解者です。 |