HOME >>> 地域の情報
【地域の情報】最新号
2006年9月号掲載

歴史を訪ねてOne Day Trip 高知県安芸市の旅

 NHK大河ドラマ『功名が辻』で、武田鉄矢さんが熱演していたのが山内家家臣・五藤吉兵衛為浄(ためきよ)。吉兵衛は伊勢亀山城で戦死しますが、主君に功名をもたらさんと奮戦する姿が印象的でした。今回は、五藤氏ゆかりの高知県安芸市へ、歴史を訪ねてOne Day Tripです。安芸市へは、高知自動車道・南国ICを下りて国道32号線を南進し、国道55号線との交差点で左折して東進します。土佐黒潮鉄道『ごめん・なはり線』を右手に眺めながら進むと、やがて同じく右手に太平洋が見えてきました。いよいよ安芸市を訪問です。 


 安芸市は、今や阪神タイガースの春のキャンプ地として有名ですが、戦国時代末期まで地元の豪族安芸氏が治めていた土地です。安芸城主・安芸国虎が長曽我部氏に討たれて安芸氏は滅びます。その後山内一豊が初代土佐藩主となり、吉兵衛の弟五藤為重が安芸を治めるようになりました。


野良時計


 まず最初に訪れたのは安芸市土居。のどかな田園地帯に、屋根の上の櫓に懸かる時計が見えてきました。安芸市のシンボルとなっている『野良時計』です。明治20年に、地主の畠中源馬氏によって作られました。時計に強い興味を持った同氏は、独学で時計の仕組みを覚え、全てを手作りしてこの時計を作り上げたそうです。時計は正面と両横の3面に付けられてあり、農作業をする人たちが遠くからでも時間を確かめることができたと想像ができます。 前面道路もビオトープのような小川も駐車場も、野良時計の周辺はたいへんきれいに整備されています。野良時計の向かいにある消防分団屯所と火の見櫓は周辺の景観に配慮した建物で、遠い昔を思い出させるような造りになっていました。


土用竹の生垣

野村隆男家住宅入口

 小径を通って目指す土居廊中(どいかちゅう)へと向かいます。土居廊中は五藤氏が安芸城を居城にした後、城を取り囲むように家臣の屋敷を配置したもので、5代当主の時代に整備されました。市役所でもらったパンフレットの案内に従って、見学をしていきました。

 道の両側にある細い竹の生け垣は、武士にのみ許されていたそうで、今も手入れがよく行き届いています。土居廊中はそこに人が住んでいるので、車庫には車が入っていたりするのですが少しも違和感なく、そこの景色にとけ込んでいます。どうしてなのだろうと思うほど、廊中の中は静かです。物音1つ聞こえてきませんでした。

 野村隆男家住宅のみ一般公開されているので、中を見学させてもらいました。昔の武家屋敷の形を残しながら、ほんの数十年前まで生活の場として使われていた様子が伺われます。立ち回りができないように狭くした玄関や、来訪者を確かめるのに家臣が身を隠すための武者隠しの壁などを見ると、質実剛健な武家の暮らしぶりが目に浮かぶようです。




安芸城跡の堀

 五藤家安芸屋敷は、南面に掘のある安芸城跡にありました。松の大木が堀の上を覆い、水面には睡蓮の花が涼しそうに咲いています。小規模ながら歴史の重みをしっかりと感じさせる佇まいです。城跡には他に、歴史民俗資料館、書道美術館、吉兵衛を祀った藤崎神社がありました。


安芸市歴史民俗資料館

 歴史民俗資料館では、特別展示『五藤家出世物語』が行われていました。『功名が辻』の放映で、ここを訪れる人は例年の1・5倍に増えているとのこと。ドラマの中では吉兵衛は山内一豊を支える守り役として描かれていましたが、実際の吉兵衛は一豊よりも8歳年下で、31歳で戦死したそうです。会場の入り口正面には五藤家家宝の鏃(やじり)が塗りの箱とともに展示されていました。


山内一豊の顔から抜いたと伝えられる鏃

当時の工芸品「蒔絵船形弁当」

 主君一豊の顔に刺さった矢を、吉兵衛が引き抜いた時の鏃です。敵将と遭遇した一豊は、敵が放った矢に顔を射抜かれながらも敵将を倒しますが、矢がなかなか抜けません。吉兵衛がわらじ履きのまま主君の顔を踏みつけて、矢を抜いたと伝えられています。その時のわらじも展示されていましたが、意外に小さく感じられました。当時のものかどうかは定かではないとのことですが、いずれにしても長い年月を経たものであるには違いありません。


展示室の様子

 正面に五藤家の幕が張られていました。中央に主家・山内家の紋を配し、左右に自家の紋を配しています。五藤家の紋は、『上り藤内一文字』と呼ばれるもので、『一』の字は一豊の一の字をもらったそうです。展示物を見ていると、主君に仕える家臣の心意気が伝わってきます。


書道美術館


 書道美術館は、全国初の公立の書道専門の美術館です。残念ながら訪れた日は休館日でした。安芸市は藩政時代より書道が盛んなところで、著名な書家を多数輩出している土地柄です。市内の公園などで、数々の書碑を見ることができます。





廊中ふるさと交流館

 安芸城趾を出て、近くの廊中ふるさと館で昼食タイムをとりました。お昼を少し過ぎた時間であるのに、次から次へと人が入ります。人気の秘密は何だろうと思っていると、運ばれてきたお弁当の上に小花が添えてありました。ちょっとした心遣いがいいですね。安芸市のナスは全国1の生産量を誇るそうで、ナスの1品もおいしくいただきました。


手前がナスのアイスクリーム
奥はキウイのシャーベット

駐車場には『しゃーべっと茶屋』があり、地元特産のとれたて野菜や果物のアイスクリームが自慢です。ナスのアイスクリームは、後味がナスだな、と感じました。コーンに少し甘味があるので、ゆずやキウィーのシャーベットも酸っぱさが気にならないと思います。


景色と一体化した土居小学校の塀

 小学校の塀もなまこ壁風です。土佐特有の水切り屋根をつけた家屋もたくさん見られます。古いものを大切に守っているまちでした。


【ちょっとよりみち】

『鯉のぼり』の曲碑


  安芸市は、大正・昭和期に活躍した作曲家・弘田龍太郎の出身地でもあります。弘田龍太郎は、『春よ来い』『雀の学校』など、今も歌い継がれている童謡や歌曲を数多く残しています。安芸市では弘田龍太郎の偉業を後世に残すために、「童謡の里づくり」に取り組んでいます。現在市内10カ所に曲碑が設置されています。
 野良時計近くの駐車場には『鯉のぼり』の碑がありました。四角の石盤には歌詞が彫り込まれ、上下には楽譜が刻まれています。のどかな田園風景によく似合っていました。

 『春よ来い』の曲碑は岩崎弥太郎の生家の前にあり、丸い石盤で、ピンクの大きな梅の周りを音符が囲んでいます。こちらも茅葺きの家の景色とよく馴染んでいました。


『雨』の曲碑

 帰りの道すがら『雨』の曲碑を探しに行きました。太平洋を見下ろす高台に、大きな傘のモニュメントとともに碑がありました。碑の前に立つと、少し寂しく感じられるメロディーが流れてきました。『♪雨がふります 雨がふる 遊びにゆきたし 傘はなし…』と歌詞が口をついて出てきます。眼下から聞こえる波の音に誘われて、海岸へ下りてみることにしました。長い砂浜が広がり、目の前は何も遮るものがない水平線です。大きな音を伴って打ち寄せる波を、飽きもせずしばし眺めて帰途につきました。



『春よ来い』

『叱られて』

『金魚のひるね』
一覧
これ以前の地域の情報
足の向くままOneDay トリップ 香川県善通寺市の旅 (2006-08)
生活に根ざした防災  〜新居浜市立川町自治会〜 (2006-07)
ワインと日本酒 活躍する女性2人 (2006-06)
育児までトータルにサポート 〜マミー助産院(四国中央市)〜 (2006-05)
別子銅山ガイドブック完成 〜新居浜南高校 情報科学部〜
  ■写真ページ
(2006-04)
早春・瀬戸田紀行  〜広島県尾道市瀬戸田町〜 (2006-02)
多喜浜塩田の歴史を語り継ぐ  〜新居浜市多喜浜地区 (2006-01)
荘内半島周遊 〜香川県詫間町ほか (2005-12)
ドイツとの交流のかけ橋 〜徳島県鳴門市『ドイツ館』ほか〜 (2005-11)
足の向くまま One Day Trip 〜香川県琴平町を歩く〜 (2005-10)
森の中に広がるゆっくりの空間〜『霧の森』(四国中央市新宮町)〜 (2005-09)
OneDayTrip土佐町の旅 〜高知県土佐郡土佐町〜 (2005-08)
国宝、重文の武具が見どころ 〜『大山祇神社』(今治市宮窪町) (2005-05)
光あふれる授産施設 〜『ばっぽの家』(東温市西岡) (2005-04)
カブトガニの保存に取り組む 〜西条市(旧東予市) (2005-03)
道後に生まれたお洒落な空間 〜道後ぎやまんの庭〜 (2005-02)
OneDay トリップ 小松町の旅 (2005-01)
悲しみを乗り越えて 〜児童劇団『蕪っ子』〜 (2004-12)
新しい情報発信拠点に 〜村上水軍博物館〜 (2004-11)
民家をグループホームに 〜NPO法人グループホームしいのみ〜 (2004-10)
どてかぼちゃカーニバル 〜温泉郡重信町〜 (2004-09)
射撃を趣味で楽しむ 〜四国中央射撃場〜 (2004-08)
夏休み、南予に注目! 〜お出かけ情報〜 (2004-07)
17世紀の民家の姿をそのまま残す 〜国指定重要文化財・真鍋家住宅〜 (2004-06)
広い敷地に花や緑がいっぱい 〜県花き総合指導センター〜 (2004-05)
OneDayトリップ美馬の旅 〜徳島県美馬郡〜 (2004-04)
遊び・創作・自然…充実の体験プログラム 〜えひめこどもの城〜 (2004-03)
読書の楽しさ伝える 〜川之江市のブックスタート〜 (2004-02)
町並博に向けて元気いっぱい 〜東宇和郡宇和町〜 (2004-01)
“書の甲子園”で全国優勝 〜三島高校書道部〜 (2003-12)
「地産地消」の給食づくり 〜今治市の学校給食〜 (2003-11)
大野原町 OneDay トリップ 〜香川県三豊郡大野原町〜 (2003-10)
▲ページのTOPへ
管理者:rinkun1@basil.ocn.ne.jp (C)Copyright  教育情報新聞社