◆池田〜大歩危小歩危を通って祖谷街道へ
徳島自動車道・井川池田ICで下りて国道192号線を西進、池田町で左折して国道32号線へ入り、吉野川沿いに南進します。ゆったりと広々と流れていた吉野川が次第に幅を狭め、緑濃い水の色と岩肌が美しいコントラストを見せる大歩危・小歩危渓谷を左手に眺めながら車は走ります。やがて前方に『大歩危橋』が見えてきました。大歩危橋を渡って県道へ。いよいよ祖谷の地です。祖谷地方は、深い渓谷によって隔てられた地であったために、日本三大秘境の1つに数えられています。屋島での合戦に敗れた平家一門の武者らがたどり着いた地と言われ、源平にまつわる伝説が数多く残されています。現在では道路がかなり整備されてきたので、車で気軽に訪れることができるようになりました。
県道を進んで初めに通るのは『かずら橋』で有名な旧西祖谷山村。かずら橋周辺は、多くの観光客や車で賑わっていました。観光シーズン中の交通混雑を避けるために、立派な迂回路と大掛かりな駐車場ができていました。かずら橋のすぐ近くまで、新しくできた橋が接近しています。秘境の地のひなびた風情を求めて来た人には、ちょっと期待外れな思いをさせそうです。

川を挟んで対岸から見た落合集落 |
さらに進んで県道は旧東祖谷山村に入りました。しばらく走ると道はいつしか、地元の人から『よさく』と呼ばれている国道439号線に変わっていました。目指す落合集落はもうすぐです。
◆山はだに開かれた落合集落
落合集落の魅力の1つは、対岸からその全容を眺めることができる点にあると言われています。東祖谷中学校の所で国道をそれ、川を挟んで落合集落のちょうど真向かいになる場所へと向かうことにしました。細い道を幾度か折れ曲がりながら少しずつ、上へ上へと登っていきました。かなり登ってちょうど真向かいになる場所へやってきました。山の南斜面に広がる落合集落は、陽の光を浴びて素晴らしい景観を呈していました。
どっしりと安定感のある山。裾野から中腹にかけて広がる畑地と点在する家々。あちらこちらに見える森や林。空の青、森の緑、家々の屋根の青や赤の色。美しい景色が目の前に展開されています。集落のほぼ中央に見えるひとかたまりの緑は、鎮守の森でしょうか。畑地から立ち上る一筋の白い煙までが絵になっています。
伝建保存地区の面積はおよそ32・3ヘクタールで、東西750メートル、南北850メートル。地区内の高低差は390メートルもあります。保存地区内には68戸残っており内空き家が16戸あるとのこと。茅葺き屋根が残っているものは数が少なく、茅葺きにトタンをかぶせているものやトタン屋根が多くを占めているそうです。対岸からのこの景色は、いくら眺めていても見飽きることがありません。
◆落合集落を散策
より詳細に見学するために、今度は落合集落へと向かいました。集落内を走る道路は、昭和30年代後半に他の集落とを結ぶ林道として建設されたもので、集落内の最も高い位置の家まで車で行くことができます。しかしながら真上にある家を車で訪ねようとするにも、東西にかなり走って何度かハンドルを切ってヘアピンカーブを曲がらなければなりません。それだけ斜面の勾配がきつい訳なのです。

斜面で育てられるそば |

石垣の上に作られた水田 |
また道路に面していない家屋もあり、車が通る道への上り下りや耕作地への行き来は、今もって赤道(赤筋道)と呼ばれる古くから残る道が利用されています。この赤道は集落内を東西南北に通っていますが、自動車道路の建設が進むと共に、利用されなくなった道も多いそうです。細く急な勾配の赤道を通って、田や畑を見学することにしました。見上げれば、家がはるか頭上高く見えています。山の傾斜に沿って石で段をつけた道を上り始めたものの、少し進んだだけで足がガクガクし始めました。最も厳しい傾斜の所では60度くらいはあるのでは、と感じられました。眼下に広がっていく景色を眺めながら、一歩一歩進みました。
祖谷の畑地の特色は、水平にならすことなく斜面をそのまま利用している点です。白いそばの花が一面に咲いている畑が、あちらこちらに見られました。春にジャガイモを植え付けて夏に収穫し、その後そばを植えるそうです。そばは『祖谷そば』として有名で、国道沿いには手打ちそばが体験できるそば道場もあります。また、小ぶりで身がずっしりと詰まった祖谷のジャガイモは、味が濃く煮くずれしないのが特徴です。この集落内では水田は珍しく、4枚しかありません。水田を支える石垣は、大小長短の石を見事に組み合わせて築かれてあります。

伝統的な屋敷構え |
さらに上にのぼって、今度は民家の伝統的な屋敷構えが最もよく見える地へ向かいました。市の教育委員会で見学ポイントを教えてもらっていたのです。屋敷地は等高線に沿って細長い形状で奥行きが浅く、石積みで支えられています。また建物は山を背に谷に正面を向いて建てられていて、土地の形状に沿って主屋や隠居屋や納屋が横に並んでいるのがこの地特有の建て方なのだそうです。

見事な社叢の三所神社 |
最後に村の鎮守様である『三所神社』を訪れました。秋祭りが行われたのか、幟をたてていたような跡が見られました。自動車道路から急な階段をジグザグと上がっていって、正面から拝殿を見上げました。赤い鳥居の両脇に、何とも立派な杉の木がそびえ立っています。幹周りは約5メートルはあるでしょうか。石段を上がって、拝殿前に行くと、周りには先の杉に勝るとも劣らない大木が連なっていました。この森は、徳島県指定の天然記念物・東祖谷の社叢群の内の一つです。鎮守の森の木々の大きさを見れば、落合集落の歴史の古さをうかがい知ることができます。
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