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【地域の情報】最新号
2006年11月号掲載

修行のお寺を訪ねる  瑞應寺(新居浜市山根町)

 佛國山瑞應寺(ぶっこくざん・ずいおうじ=新居浜市山根町)は、新居浜市の南手に広がる山裾に立つ曹洞宗のお寺です。同寺の銅葺きの緑の大屋根は、新居浜市内の各所からよく見えます。修行道場として有名な同寺を訪ねました。



瑞應寺参道

教體楼

 国道11号線を走り、新居浜市内の東城交差点で進路を南に取って直進し、山根大通りとの交差点を通り越すと、瑞應寺の参道が見えてきます。駐車場は左手です。緩やかな上りの参道は、森の中を貫くように続いていました。森の中はしーんとしています。行き当たった所を道なりに右手に向かうと、石仏の達磨大師が迎えてくれました。左手正面に山門があり、その奥に寺院の屋根が大きく見えてきました。


両脇のモミジの枝ぶりが見事

 幅の広い石段の左右には大きなモミジの木があり、頭上高く枝が張り出しています。紅葉にはまだ早いものの、塀や門など寺の建物と美しい風景を織りなしていました。さらに石段を上って『教體楼(きょうたいろう)』をくぐると、正面は本堂です。右手には庫裡と書院、左手には僧堂があり、それらの建物は長い回廊によってつながれています。本堂の前庭はほうきの目も鮮やかに掃き清められており、禅寺のピンと張りつめた空気をよりいっそう強く感じさせていました。

 瑞應寺は、文安5年(1448年)に庄司山城主・松木景村公によって建立されましたが、豊臣秀吉の四国進攻の戦火に遭います。万治3年(1660年)に再興されたものの、文政11年(1828年)の大火により焼失。その後、20余年の歳月をかけてほぼ元の形に再建されました。専門僧堂は明治30年(1897年)に創設されています。現在同寺には西日本を中心に全国各地から約30人の僧が修行に来ています。 


2階から 北の眺め

 話をお伺いしていると、外からざわざわとかわいい声が聞こえてきました。隣の幼稚園(ひかり幼稚園=瑞應寺運営)から、園児がお寺へやって来たようです。週に1度のお仏間まいりの日とのこと。子どもらのざわめきもすぐに消え、やがて辺りはまた元通りの静けさを取り戻しました。


2階から。僧堂と大銀杏が見える

 案内の僧侶が、伽藍を見渡すことのできる2階へ案内してくれました。大正期に建てられた建物の東側と北側には、板ガラスが何枚もはめ込まれた大きな窓が連なっています。東の窓からは、園児らが回廊にそって僧堂の前に行き、次々と靴を脱いで本堂へと向かっている様子が見えました。樹齢1000年と言われる大銀杏も見えています。紅葉にはまだ早く、見頃は11月下旬だそうです。銀杏の葉が散り始めると最初の内は毎日掃きますが、落葉がピークになると積もるに任せるのだそうです。瑞應寺の銀杏の葉の絨毯は、新居浜の晩秋の風物詩となっています。北側の窓からは、新居浜の市街地や工場地帯、その向こうに広がる瀬戸内海や島々が見えていました。夜景の素晴らしさにふと夜の見回りの足を止めて、景色に目を遣ることもあるとか。


隙間なく並んだ園児の靴

本堂でお話を聞く園児たち

私たちも園児たちの後を追って、本堂へと向かうことにしました。園児たちはクラスごとに靴を脱ぐ場所が決まっているらしく、玄関にも靴が並んでいました。色とりどりの小さな靴が、ていねいに揃えて脱いであります。行儀よく並ぶ靴の列は、見事としか言いようがありません。本堂の中でも行儀良く座って、お話を聞いていました。



「長泉堂」内


 本堂の東には『長泉堂』があり、住友別子銅山での殉職者の霊が祀られていました。別子の山深い場所にある銅山殉職者の墓(蘭塔場)も瑞應寺に移されるなど、明治に入って別子銅山従業員の菩提寺の役割を果たすようになったといいます。同寺の立派な緑の大屋根は、昭和初期に別子銅山の銅で葺き替えられたのだそうです。同寺と住友との関係は深く、毎年お盆には会社幹部が参詣し、10月には殉職者の追悼法要が行われています。


僧堂。座禅の行の風景

 専門僧堂では、その日から2泊3日で『月例参玄会(さんげんかい)』という修行に入っていました。座禅を中心に行われる修行中は、僧堂内の畳1枚分ほどの空間が、雲水の生活の場となります。寝るのも座禅を行うのも食事をするのもすべてがそこで行われます。午前の座禅の真っ最中で、ほの暗い堂内はまるで別世界のように感じられました。


配膳前の祈り。雲版の音が響く

僧堂に食事を運ぶ

 食事の準備風景や食事の様子も見学しました。玄関の祭壇の前に、雲水の手によって料理が乗せられたもろぶたや手桶が、つぎつぎと運び込まれてきます。雲水の動きは、静かでいてしかも実にきびきびとしています。何往復かの後、皆が揃ったところで祈りが捧げられ、僧堂内に食事が運び込まれていきました。


配膳の前

応量器に取り分ける

配ぜんされた食事

 僧堂内に食事が運び込まれると、雲水らは自分の応量器(おうりょうき=雲水が僧堂で修行する時に持参する食器)を出して、食膳の用意をしていきます。応量器は五枚重ねの黒塗りの器で、そこへ係の雲水がご飯や料理をつぎ分けていきます。量の加減などの意思表示はすべて所作で行われ、言葉が発せられることはありません。食事も修行の内で、厳しい作法に則って物音1つたてることなく静かに行われていました。
 境内での物事の始まりや区切りは言葉で伝えられるものはなく、音によって知らされています。建物のあちらこちらに『版(はん)』と呼ばれる鳴し物が下げられていました。玄関には青銅製と見られる『雲版』が、僧堂の奥には魚の形をした大きな『魚版』が、また四角い木版が方々にかけられています。太鼓や鐘も見られました。
 同寺を訪問したのはこの秋一番の冷え込みとなった日で、山際に吹く風はことさら冷たく感じられました。約束の時間にお伺いして応接の部屋に通して頂いたのですが、室内がほど良く温められているのに気が付いて少々驚きました。来訪者への心配りを感じ、ありがたく思いました。瑞應寺の紅葉は今からが見頃です。


【住職さんのお話】

瑞應寺住職・楢崎通元老師

 園児の靴の並べ方に関心をもったものですから、楢崎通元住職にお話を伺いました。

 ここではいちばんに靴を並べるというところから始まる。みんなが共同で生活ができる人間にならなければならない。幼稚園を50年ほど前からやっているけれど、その前は日曜学校をやっていて、信徒の子どもが来ていた。今はいろいろな家庭からやって来るけれど、この雰囲気に入ったらいっしょにやるようになる。最初からできる訳はないんですよ。
 頭の良し悪しとか、勉強がどうのこうのというよりは、基本の訓練ができる人間にならなければいけない。それがここの狙いですね。こどもたちには、(僧侶らのことを)「お寺の先生」と呼ばせている。
 自分一人で生きている訳じゃないんだから、それをどのように解釈するか。親があって自分があるのは当然。その親にも親があるし、周りの人がいる。いろいろな天地の恵みがあって周りの支えがあって、生きてる訳だから。そのようなことをどこで教えるのか。先生にそういう考えがなければ、ここには弁当を食べに来るだけになるね。お手本がなければ子どもはどうしていいのかわからない。
 自分は自分という考えだけで、周囲を受け入れようとしなければ良くなるはずがない。お寺でもそうよ。雲水さんは修行に来ているとはいうものの、いろいろだから。それが1年くらいここにいる間に、ちょうど芋の子を洗うように変わっていく。誰が洗うというのではなく、みんなと混ぜてやっている間に独りでに良くなっていく。

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