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2006年12月号掲載

食を通して広がる輪  うまっ子食育クラブ(四国中央市)

 11月22日、四国中央市の福祉会館で、服部栄養専門学校校長の服部幸應氏による講演会が開かれました。この講演会は、食育を推進する民間の「うまっ子食育クラブ」の設立記念として、同クラブの主催で行われたものです。
 食育クラブが民間の主導で設立されたのは、全国でも初めて。一人の思いから始まった活動は、協力しようとする心の集まりによって、食というテーマを介しながらだんだんと大きな動きとなっていっています。



絶妙なかけ合いで笑いを誘った、
らくおばちゃんとの食育トーク

 講演会の前半は「食育のすすめ」と題して服部氏が基調講演。後半は、らくおばちゃんでおなじみのタレント・らくさぶろうさんとのトークが繰り広げられました。「料理の鉄人」、「愛のエプロン」などテレビでもよく見かける同氏が地元で講演するとあって、会場をうめ尽くす600人もの参加がありました。訪れた人は熱心にメモにとったり、時々どっと笑いが起こったり、会場は大盛況となりました。

 「専門家の集まりでない民間主導でつくられた市民参加型の食育クラブは、食育関係者やメディアなどいろいろな方が調べてくれたんですが、全国で初めてだろうと言われています」とは、同クラブ理事長の鈴木善子さん。鈴木さんは市内の宅配弁当会社の副社長で、食育クラブをつくろうと最初に呼びかけた人。5年前から食べやすい玄米ごはんの商品化に取り組む中で「食育」という言葉に出会いました。
 四国中央市は早くから給食に地元産の米や野菜を取り入れるなど、「地産地消」に対する意識が高かった土地。同時に、給食に使われている地元産の農作物について学んだり、生産者とのふれあいを持ったりして食の大切さを学ぶ「食育」の授業も、小中学校において行われてきました。そんな中、「食育」という言葉が学校現場の外や地産地消のテーマ以外であまり語られることがないことに疑問を持っていた鈴木さん。「食っていうのは口に入ること。私自身病を患ったことがあって、食べるもので人間が変わるのは分かっていたけど、それを訴えかけてくれる人がいなかった」(鈴木さん)。その頃、東京の知人の紹介で服部氏の食育セミナーを聴いて「これだ」と感銘を受け、「民間の食育クラブをつくりたい」と思うようになったと言います。

 食育の講演が学校や企業だけで行われていたら、そのうち一般の私たちには食育は無縁のものになってしまう│。服部氏の食育の話をぜひ地元の人にも聞いてもらいたいと氏に講演を依頼し、OKの返事が事務局からファクスで鈴木さんの元に送られてきたのが今年の春のことでした。「さてこれはどないしよう。本当に来てくれるわ」。食育クラブ設立に向けての動きが本格化します。交友のある愛媛新聞の社員と鈴木さんの2人から活動を始め、メンバーが10人になったところで初めて顔合わせ。地元の小児科医師が会長を引き受けてくれることが決まり、8月18日、「うまっ子食育クラブ」発足の設立総会が行われました。
 最初の目標は講演会を成功させること。活動資金を得るために、市のまちづくり助成金の獲得に取り組みました。鈴木さん宅に有志が集まり、プレゼンの準備です。「私がしゃべるんだけど、若い子が原稿を作ってくれて。30秒多いだとか言いながら作っている横で私は一生懸命におにぎり作って。できた原稿をしゃべって、また1分足らんとか(笑)。そうやって朝の3時半くらいまでした日が3日続いて」。その甲斐あってプレゼンは成功。活動費を得て、口コミでまた少しずつ会員が増えていきました。


当日の様子。会員さんらが受付を担当

 老若男女、多種多様な人が講演会の成功に向かって動きました。チケットを売って動員をかける人、パンフレットにチラシを挟む人、会場の椅子を出す人…。鈴木さんも従業員と二手に分かれて2日間、西条から東のスーパーやコンビニ1軒1軒にポスターを貼りに動きました。それぞれが得意分野の役割を自発的に受け持っていく中で、皆の気持ちが盛り上がっていきました。
 講演会当日。会員さんたちは黄色いジャンバーを着て、受付や場内整理などにせわしなく動きました。講演会が無事終了し、その後に服部氏を囲んでの打ち上げの席が設けられました。氏が一般の食育クラブの会員と席を同じくすることはこれまでに例がなかったそう。準備に当たってきた会員たちが初めて一度に顔を合わせる機会にもなりました。

 今後は月に1回は食育に関する勉強会を開く予定。来年2月にはらくさぶろうさんを迎えての第1回食育セミナーを計画しており、その後も月1回程度、郷土料理のセミナーや三世代で学ぶ食育教室、親子向け・男性向け料理教室などが企画されています。
 現在の会員数は32名。賛助会員(企業・団体など)もいます。会員は市内外を限らず、会社社長、単身赴任の男性、若いお母さん、印刷業、美容関係、地域で子どもの防犯に取り組むご婦人、レクバレーのお世話役など実にさまざま。これからは会としての勧誘は一切行わず、会員の口コミのみでやっていくのだそう。「いろいろな仕事を持った人やいろいろな立場の人がいて。それが民間の食育クラブの面白いところ。たとえばここに来て、思っていることを誰かに聞いてもらうだけでもごはんがおいしく食べられる。食育ということにこだわらなくても、食に関してそういう集まりがあってもいいんと違うかな」(鈴木さん)。

 そんな食育クラブの誕生に服部氏は、講演会翌日に駅のホームで見送る鈴木さんたちに、このような言葉を残して帰ったのだそう。「人は一人でなく集まったら、気持ちが豊かになって、ごはんが美味しく食べられる。食は人を引き寄せるね。このうまっ子食育クラブがそれを証明してくれた。僕はとっても嬉しい。これをまた講演で伝えていく」。
 「食は人を引き寄せる」。食と共に地域が元気になっていけばという思いが広がっています。

【基調講演「食育のすすめ」ダイジェスト】

講演をする服部幸應氏

 ▽18年前に服部栄養士専門学校の新入生に1週間の食生活記録を提出させたところ、ほとんどの学生にバランスの悪い食事・過剰なダイエット・朝食抜きなどの問題点が見られた。栄養士や調理師になろうとする人がそれではいけないということで改善を促したけども、2年後に同じ調査を行った結果、改善が見られたのはわずか6%にすぎなかった。このことが私が「食育」を訴え始めようと考えたきっかけでした。

 ▽子どもは0〜3歳がスキンシップ期間。心身ともに人間としての基盤が形成される3〜8歳の頃は、家族で食卓を囲むことが最も大切な時期。身体の発育はそれから17歳頃までで、成長期における子どもの食習慣は、親に責任があるのです。

▽危険な5つの「こ食」
 ◎「孤食」…家族不在の食卓で一人淋しく食べること。好き嫌いを増やし、社会性に欠け引きこもりやすくなる。
 ◎「個食」…バラバラ食。同じ食卓についていても、家族がそれぞれに自分の好きなものを食べること。栄養がかたよりやすく、他人の意見を聞かないわがままな子どもを育てる。
 ◎「固食」…自分の好きな決まったものしか食べないこと。栄養がかたより、肥満やキレやすい子どもに育つ。
 ◎「小食」…食べる量が少なくバランスが悪い食べ方。モデル体型に憧れる女の子の間で激ヤセが流行っているが、発育に必要な栄養が足りないと無気力になりやすい。
 ◎「粉食」…パン中心の、粉を使った主食を好んで食べること。噛む力が弱く、歯が丈夫に育たない。カロリーオーバーになりやすい。
 これに加えて調理済み加工食品ばかりの「濃食」も要注意。

▽食育の3つの柱
◎選食能力を高める…安心・安全な食べ物か、栄養のバランスはいいかが分かるように。
◎食事作法を身に付ける…正しく箸が持てたり、「いただきます」と「ごちそうさま」をきちんと言えるように。
◎世界レベルで食を見る目を養う…世界の中で豊かな食生活を送っているのは8%で、日本人は全員この中に入る。日本が残飯として捨てている量は、食糧難や栄養失調の国の食糧をまかなえるほど。

▽親殺し、子殺しの事件が近年急増しているのは、食卓でのコミュニケーションやしつけが足りなかったためとも言えると思います。子どもの健やかな成長の土台となるのが「食育」。家族揃って食卓を囲み、会話をしながら同じものを食べる習慣を。食卓は子どもにとってかけがえのない「しつけ」の場なのです。

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