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2007年12月号掲載

本物に触れて楽しめる 〜鉄道歴史パーク in SAIJO〜
 11月26日、JR西条駅の東隣に『鉄道歴史パーク in SAIJO』(愛媛県西条市大町)がオープンしました。駅構内と言ってもよいほど隣接しています。『鉄道歴史パーク―』は、「四国鉄道文化館」「十河信二記念館」「観光交流センター」の3つの施設から成っています。

『十河信二記念館』
十河信二記念館

 最も駅寄りに建っているのが、『十河信二記念館』です。ここを訪れると、どうして西条市に鉄道関連の施設ができたのかがよく解ります。同館1階では十河信二氏の経歴と業績が紹介され、2階には勲1等瑞宝章を初めとして旅先からの絵はがきなど、遺族から寄贈された同氏の遺品が展示されています。

十河氏の胸像(館内)

 『新幹線の生みの親』とも『新幹線の父』とも呼ばれている十河信二氏(1884〜1981年)は、旧愛媛県新居郡(現愛媛県新居浜市)の出身で、旧制西条中学校を出ています。東京帝国大学に進学し卒業の後は、国鉄の前身である鉄道院に入り、鉄道事業に従事するようになります。満州で鉄道事業に携わるなどした後、戦後まもなく第2代西条市長に就任。その後、昭和30年に当時の国鉄第4代総裁に就任し、2期8年にわたり総裁職を勤めました。在任中に東海道新幹線計画を推し進め、昭和39年の開業にこぎ着けました。開業時には職を退いていたものの、東京駅の新幹線建設記念碑には同氏のレリーフと座右の銘が刻まれるなど、今にその偉業が伝えられています。
 同氏は西条を故郷と称し、昭和44年には西条市名誉市民に選ばれています。鉄道にゆかりの深い十河氏にちなんで、西条の地にこのような施設ができたのも肯けます。記念館1階では関連グッズも販売される予定です。

『四国鉄道文化館』
四国鉄道文化館
0系新幹線(左)とDF50形ディーゼル機関車(右)
大人気の0系新幹線運転席
走ってきたままの状態で展示されている
DF50形ディーゼル機関車

 『四国鉄道文化館』の扉を開けると、正面に大きな車両がド〜ンと座っていました。JR四国多度津工場に保管されていた『0系新幹線電車』と準鉄道記念物『DF50形ディーゼル機関車』1号機です。この施設では、玄関で履き物を脱いでスリッパに履き替えます。電車内を自由に見学してもらうために、このような方式をとっているとのことでした。
 さっそく新幹線電車内へと上がります。運転席が想像以上に高いので驚きました。運転席のスイッチやハンドル類は、赤い表示のもの以外は自由に触って動かしても良いのだそうです。見学者に大人気で、休日には1時間待ちとのことでした。運転席の後部は客車部分になっていて、ここでは同館建設プロジェクトの番組が放映されています。運転席見学の順番待ちも退屈しないようになっています。本来は全長26メートルの電車ですが、展示されているのはカットモデルで、長さが半分になっています。

 『DF50形ディーゼル機関車』1号機の展示は、さらに臨場感溢れるものとなっています。JR予讃線から引き込まれた線路は建物内にまで続き、枕木や軌道に敷き詰められた砕石まで本物仕様です。日本で唯一走行可能な状態で保存されていた1号機は、JR多度津工場からの移転の際も、牽引された状態で予讃線を使って移動してきました。同車両の移動中には、各駅に鉄道マニアが待ち受けていたそうです。こちらの運転席も誰でも自由に見学することができて、しかも触ることができます。準鉄道記念物だけあって、車両の内も外もマニア垂涎のものが並んでいるのだそうです。


手づくりのジオラマ。
右は制作・寄贈者の宇佐美和雄さん

 車両展示の奥には、市民ボランティアによる鉄道模型の展示があり、訪れた子どもたちに絶大な人気を博しているコーナーとなっています。幅2・35b奥行き1・2bのジオラマは手作りで、10年を超す歳月を掛けて制作されたものです。趣味で作っていたものですが、個人の手元に置いておくよりも多くの人に見てもらえたらとの意志で、同館に寄贈されることになりました。同館に展示するに当たり、ビルを増やすなどしてさらにバージョンアップさせたそうです。

 建物の南側は大きく窓が取られて、外が見渡せるようになっています。窓のすぐ外は西条駅ホームの続きで、駅に発着した列車を目の前に見ることができます。入場者のお目当ては、四国内を走る『アンパンマン列車』。色とりどりのアンパンマンのキャラクターが描かれた同列車は、大人にも子どもにも大人気です。ちょうどこの列車の発着時刻に併せて、来館する人も多いのだそうです。

展望デッキからの眺め

 また同館2階は展望デッキになっており、南に広がる石鎚山系を一望できるほか、西条駅構内を見渡すことができます。西条駅構内には、鉄道開通(大正10年)当時に建てられたレンガ造りのカーバイト庫や給水塔が今も残っていて、乗務員の休憩室として使われていたと思われる古い木造の建物も連なり、西条駅自体がまさしく鉄道遺産となっています。

ゆるやかな弧を描く柱材

 館内上部を見上げると、太い杉材が美しい曲線を描いています。特殊な工法で曲げられた杉の丸太が、大きな屋根を支えているのです。愛媛県産材100パーセントで作られていて、しかも合成材も集成材も一切使われていません。耐震強度も非常に高く、通常の1・25倍と言われています。建築の素晴らしさも同館の見どころの1つとなっています。

『観光交流センター』

 広場を挟んで北側にあるのは、『観光交流センター』です。昭和初期に建てられた倉庫を改築したもので、切り妻の大きな屋根と深い庇が良い雰囲気をかもし出しています。同センター内には西条自慢の『打ち抜き』が設けられ、おいしい水を味わうことができます。また建物奥には『だんじり』のコーナーがあり、だんじり1台のほか市内各所のだんじりの提灯などが展示されています。駅の間近とあって、市内紹介のパンフレット類を求める人が多く、ラックに置いても直ぐに品薄になるとのことでした。西条市観光情報の発信基地となる施設です。

観光交流センター
『だんじり』コーナー

【雑感】
 四国鉄道文化館の特徴は、展示物である車両の中に入って、自由に触ったり動かしたりできる点ではないかと思います。また建物内に敷かれた実物のレールや砕石も、周りに囲いや柵がある訳でもなく、思い切った展示がされています。でき得る限り実際に触れてもらいたい、本物を感じ取ってもらいたいと願ってのことであろうと思います。来館者がマナーとモラルを守ることで、いつまでもこのような見学や展示が実施されることを願います。

施設案内 ◆営業時間:(3施設とも)午前8時〜午後7時
◆休館日:十河信二記念館・四国鉄道文化館=水曜日
       観光交流センター=年中無休
◆入館料:十河信二記念館・観光交流センター=無料
       四国鉄道文化館=大人300円、小人100円(団体2割引)
◆問い合わせ:電話=0897-47-3575


水の都・西条らしく四国鉄道文化館の
ぐるりに設けられた小さな堀
自然や歴史を守り活かす
『ヘリテイジセンター』


 『四国鉄道文化館』は、財団法人日本ナショナルトラストによって、自然や歴史環境を守り、活かして学ぶ拠点『ヘリテイジセンター』として建設されたもので、西条市が運営管理しています。『四国鉄道文化館』は9番目のヘリテイジセンターです。
 (財)日本ナショナルトラストは、英国の環境保全団体『ザ・ナショナルトラスト』を範として1968年に設立されました。日本の自然や歴史的環境を守ることを目的として、調査、保護、普及を中心に活動を行っています。 

 《各地のヘリテイジセンター》
  ▼葛城の道歴史文化館(奈良県御所市)
  ▼飛騨の匠文化館(岐阜県古川町)
  ▼白川郷合掌文化館(岐阜県白川村)
  ▼名勝大乗院庭園文化館(奈良県奈良市)
  ▼長浜鉄道文化館(滋賀県長浜市)
  ▼北陸線電化記念館(滋賀県長浜市)
  ▼琴引浜鳴き砂文化館(京都府網野町)
  ▼村上歴史文化館(新潟県村上市)
市内中心部、アクアトピア水系の散策道


【ヘリテージ=遺産、継承物、また、伝統、伝承】

同財団の、自然や歴史遺産を保存し活用するための基礎調査やまちづくりに活かすための調査は、これまで全国で200件以上行われており、2002年度には『水と翠のまち西条の歴史遺産』が調査対象となりました。
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