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2008年10月号掲載

水を治め 水を生かす 〜富郷ダム(四国中央市)〜
 四国地方は今年も小雨傾向で、10月初旬現在では県下の各ダムともに貯水率が回復しているものの、これから雨が少ないシーズンに入ることから、予断の許さない状況がまだまだ続いています。愛媛県内には、国や県や(独)水資源機構のダムなど多くのダムがあって、各河川の水の管理や調節が行われています。今回は、水と密接な関わりのあるダムを見学してきました。

 テレビやラジオで節水への呼びかけが行われると同時に、各ダムの貯水率がよく紹介されています。『○○ダム・○○%』と紹介される中に、『銅山川水系3ダム・○○%』と表現されるのを、「おやっ?」と思ったことはないでしょうか。3つのダムは1つのグループなの?単純な疑問を抱いて、銅山川水系3ダムの1つ、『富郷(とみさと)ダム』を訪ねました。

 富郷ダム(=四国中央市富郷町津根山)は、四国中中央市内・旧三島から車で約30分の道のりです。市内と山間部を隔てる法皇山脈を貫く法皇トンネルまでは約10分ほど。トンネルを抜けて道を下った先に見えているのは金砂湖です。金砂湖は柳瀬ダムのダム湖で、現在は水がほとんどない状態でした[写真@]
 赤いアーチ型の平野橋を渡り、銅山川右岸の道を進みます。車で5分ほど走るとようやく、川に水が流れている様子が見て取れるようになりました。ダムに向かう道中には何カ所かダム情報の電光表示板があり、『取水制限中』と出ているのを見ると、現在の水の状況が肌で感じられます。金砂湖から車でおよそ15分で、左手に大きなダムが見えてきました。

 広々としたダムサイトには、平成12年の竣工を祈念したモニュメントが立っていました[写真A]。3階建ての管理棟は屋上に大きなアンテナが備えられてあり、かなり立派です[写真B]。2階の事務所で、所長さん[写真4]らが富郷ダムについて説明をして下さいました。


 
県立自然公園内のため、周りの景観に配慮して建設されました。通常は表に出ている巻き上げ機などがコンクリートの中に収められています。透明の窓から一部見えるように工夫されています。

【銅山川水系3ダムの歴史は?】
 吉野川の支流である銅山川の水は、柳瀬ダム(昭和29年完成)、新宮ダム(昭和50年完成)の2つのダムで完全に分水されて、四国中央市(現)に供給されていました。愛媛分水で生み出された水により、同市は水を多量に消費する紙・パルプを中心とした製紙産業地域として発展をしてきました。産業の発展に伴い、水道用水と工業用水の需要が増大し、水不足が深刻化する中で、治水と利水の両面から計画されたのが富郷ダムです。宇摩地域のみずがめとして、大きな期待を担って平成12年に誕生しました。

【3ダムは1つのグループ?】
 銅山川の水は、3つのダムで運用されながら四国中央市に供給されています。最も下流のダムである新宮ダムの水から使い、使い切れば次は柳瀬ダム、その次は富郷ダムの順に水を使っていきます。下流のダムから先に水の供給をすることで、効率的な利水が図られるとのこと。銅山川は3つのダムで水を確保しているので、公表されているのは3ダム合計の貯水率であるという訳です。

【いざ見学 !! 】
●操作室を見学しました  

 事務所となりの操作室[写真C]には、パソコンや各種のボタンがずらっと並んでいます。ゲート操作のボタンやダム放流時の警報サイレンのボタンなどが、すべてここに集約されています。
 ダム下流に急激な水位上昇が予想される放流については、該当地域に確実に放流警報が行きわたるよう細心の注意が払われます。ダム下流にはサイレンを鳴らす地点(警報局)がいくつかあり、その局を指定してボタンを押すとサイレンが鳴ります。サイレンが確実に鳴ったかどうかは、職員さんが現地で確認をしているのだそうです。またダム情報として、電光掲示の表示板でも知らされます。

●ダムの中に入ってみました

 富郷ダムにはエレベーターが設置されていて、誰でも自由にダムの下へ降りることができます。下に着くまで、想像していた以上に時間がかかったように感じました。何メートル降りたのかを尋ねると、約80bとのこと。エレベーターを降りると今度はトンネルです。トンネル内[写真D]はひんやりとしていい気持ちです。トンネル内の気温は、年中ほぼ一定で13度くらいだそうです。長い通路には、イベントを行った時の写真が多数展示されていました。

 トンネルを抜けると、ダムの下に出てきました。下から見上げると、ダムの迫力は相当なものです[写真E]。放流をしている時は水しぶきがすごいのだとか。エレベーターで降りてダムの高さを実感し、トンネルを歩いてダムの厚みを体感しました。
 ダムの中には、漏水を測定する設備やさまざまな観測計器が設置されていて、一般の人は入ることができませんが、それらを観測したり点検したりするための通路があるのだそうです。

【その他には…?】

 富郷ダムには、調査用のトンネルをそのまま残して利用した展示場・『ダムワールド』[写真F]があります。ダムの役割やダム建設の工事の進め方をパソコンで見ることができます。コンクリートの作り方まで説明されていて、なかなか興味深いものがあります。ダムの見学者は、年間で13000人ほど。富郷ダムでは、地域住民との交流にも力を入れており、ダムの果たす役割や水の大切さを知ってもらう機会を作っています。

 昨年の渇水が、これまでで最も緊急事態であったとのこと。海抜407・54bの最低水位を記録し、取水制限は第5次にまで及びました。一方、山に大雨が降ってゲート放流が必要と判断した時には、職員さんたちは何時であろうともダムに来て、防災体制に入ります。今年は6回あったそうです(10月上旬現在)。富郷ダムができて8年。職員さんたちは決して多くはない人数で、銅山川流域の防災と安定した水の供給に取り組んでいます。


【富郷ダムの役割は?】
富郷ダムは多目的ダム。3つの大きな目的を持っています。
▼洪水調節 大雨や洪水の時に、洪水被害を最小限に防ぐために、下流への水量を調節。
▼都市用水の確保 水道用水(日量最大4万5千立方b)、工業用水(日量最大12万8千立方b)の取水が可能。
▼発電 富郷ダム直下に設置された富郷発電所において、2,900kwの発電が可能。
【富郷ダムの数字あれこれ】
▼堤高(高さ)は? 106bでビルの28階の高さに相当。
▼堤頂長(ダムの上の長さ)は? 250b。
▼ダム湖(法皇湖)の広さは? 1.5平方キロメートルで甲子園球場のおよそ36倍。
▼ダムに貯まる水の量は? 5,200万立方bで、25bプールの約12万杯分。

“富郷ダムへ”

 四国中央市内から南を見ると、高い山々が間近にそびえています。富郷ダムは、その高い山々の中を流れる銅山川上流にあります。
 富郷ダムへは、四国中央市内の国道11号線・金子交差点から南に進路を取り、国道319号線を通って法皇山脈を目指します。松山自動車道の高架下をくぐり、いよいよ山道です。曲がりくねった細い道を行くのかと思うと、権現トンネルが抜けて新しい広い道が付いていて、以前に比べるとかなり道路事情が良くなっていました。

具定展望台からの眺め

 峠にさしかかる手前の市街地が真下に見える位置に、具定展望台があります。ここからは、市内の製紙工場や住宅や臨海の埋め立て地がよく見えます。海には、チップを運んできた輸送船が浮かんで見えていました。
 法皇トンネルは、ちょっと狭くて暗い1600b余りのトンネルです。対向車と出会した時のために、待避所が所々に設けられています。

法皇トンネルの南口にある水ケ滝

 法皇トンネルを抜けると、左手には『水ヶ滝』があります。駐車場に車を停めて、滝を眺めてみました。落差は45bほどですが、滝との距離が近いのと真下から見上げる形になるので、滝の迫力を感じます。

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