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【自然花・れんげ草】最新号
   社主コラム (2005年4月)
物のそなえ、
  心のそなえ
 昨年来、国内ばかりでなく海外でも、大きな地震が相次ぎ起こっている。30年以内に南海地震の起きる確率が、3年前には40パーセントであったものが50パーセントに修正されるなど、大地震の発生は、年々現実味を帯びるものとなってきている。大地震に見舞われたならば、私たちの住む愛媛でもかなり深刻な被害が出るだろうと予想されている。

 私も、遅かれ早かれ高い確率で起きるであろう地震に備えて、家の内外の点検や非常時持ち出しの準備をしている。家族の連絡先の確認とか、最低3日分の食料と水の確保とか、救急医薬品を揃えておくなど、あれやこれやと考えて実行しているし、車の燃料に関しても、半分以下になることのないように、早めに給油しておくように心がけている。

 先日のインターネットのニュースに『地震保険加入が急増、中越地震後2ケタの伸び』の見出しがあった。昨年の11月から今年2月までの4カ月間の地震保険加入件数が、前年同期比で約25パーセント増の損保もあるという。我が家も、その数の内に入っているということになる。 

 保険に入っていようとも、いくら考え付く限りの備えをしていたのとしても、ひとたび災害に見舞われたならば、かなり不便な生活を強いられることになるのだろうと想像する。豊かで便利な日常生活を送っているが故に、感じる不便が相当あるだろう。もちろんドラマのセリフではないのだが、『人間、生きちょるだけで丸儲け』で、何はともあれ、命があることが大前提の話ではあるのだが…。

 今や、暑い季節には涼しく、寒い季節には暖かく暮らすことのできる時代になった。また、蛇口をひねればいつでも温かなお湯が出て、毎日お風呂にも入ることができる。衛生的で快適なトイレにもすっかり慣れてしまった。電気、ガス、水道を始め、車、携帯電話、インターネット等々、一時的にせよ失うものが多ければ多いほど、不便な生活だと感じてしまうだろうし、プライバシーを保つことのできない環境に置かれることを、しんどく感じてしまうだろう。

 ある番組で、大草原で暮らす遊牧の民の生活を紹介していた。パオの中は簡素で、家具調度の類はあるにはあるが、数は少なかった。私たちの日常とはおよそかけ離れた生活ではあるのだが、来訪者を歓迎し温かくもてなす様子に、『豊かさ』を感じさせる生活ぶりだと思った。

 私はその番組を見ながら、もしもこの地で大きな地震があったとしても、人々は自然に対して畏れおののきはするだろうけれども、何ら不自由も不便も感じることなく、地震の前と変わることのない生活を続けるのだろうな、とふっと想像をした。また自然災害に対してばかりでなく、環境問題や高齢化社会の介護や年金の問題など、様々な社会問題で苦慮することも少ないだろうとも想像しながら見ていた。

 自然災害でも人為的災害でも、見舞われることに怖れを感じるのは、人は、『失う』ことが苦痛で怖いからではないだろうか。命、健康、今の暮らし、これからの生活等々。日本での生活を基準とするならば、彼の地での生活は『不便』であるかも知れないが、失うことの怖れは少ないかも知れない。何か事があった時には、豊かで便利な生活をしている社会であればあるほど、物心両面ともに失うものが大きいことを思うと、真の豊かさとはどのようなものかを思う。私たちが享受している豊かさは、砂上の楼閣のようなものだ。足下をすくわれたらひとたまりもない。

 防災の知識がなければ、意識することもない。物の防災対策はもちろんのこと、人とのネットワークや心の備えを含め、災害への準備を怠ってはならない。危機管理は、まずは自己からである。

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