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【自然花・れんげ草】最新号
   社主コラム (2005年5月)
厳しさと優しさの
調和を図った
育成を
 私は、以前は大阪くらいまでならよく車を運転して出かけていたが、最近は専らJRを利用するようになった。自分が運転するよりもはるかに楽であるし、確実に時間通りに目的地に運んでくれるので、向こうに着いてからの計画が立てやすいからだ。信楽鉄道事故や、日比谷線事故などもあったが、おおむね日本の鉄道は正確で安全な乗り物だと思っていた。

 春先には、日本航空が度重なるミスで国土交通省から事業改善命令を受けたことに引き続き、今回のJR西日本の大惨事である。普段これらの交通機関を余り利用しない人でさえ、日本を代表し安全神話さえあった企業の乗り物が、このようにもろい地盤の上で運行されていたのかと、ショックを受けている。

 その日の朝、いつものようにデスクに座って業務を行っていた。ヤフーのトピックスを時折チェックするのは、日常のことである。11時過ぎだったか、『JR福知山線事故』の見出しを見た。その時に私がイメージしたのは、丹波の城下町『福知山』である。のどかな田園風景を走る電車の姿が目に浮かび、クリックしないまま、その時のチェックは終わった。

 何分かたって、またチェックを入れた。その時、事故は尼崎で起きていることを知った。最初は、普通車との接触事故のように報道されていたと記憶している。その時点でもまだ、よもや大都市の真ん中で、500人を超える乗客を乗せた電車が、マンションに激突したとは思いも寄らなかった。

 事務所では、インターネットで配信されるニュースだけが頼りとなる。チェックを繰り返すことで、少しずつ事故の状況が私にも判ってきた。更新のたびに、亡くなった人の数が増えていく。夕刻に事務所を出る頃には、50人を超えていた。漠然と恐怖を感じながら、車を走らせた。

 自宅に戻って初めてテレビで事故の様子を見た。想像をはるかに超える惨状だった。翌日になっても犠牲者の数は増え続けた。出勤や通学の時間帯であったものだから、働き盛りの人たちや前途ある学生らが多く犠牲になった。突如人生を断たれたご本人の無念さ、家族を失った人々の深い悲しみを思う。痛ましい限りだ。亡くなった方々のご冥福を祈らずにはいられない。

 今回の事故については、様々な観点から報道がされている。青少年健全育成の活動にかかわり、『人育て』『子育て』についてアドバイスを行う機会の多い私は、人材育成の観点からこの事故を捉えてみたいと思う。

 電車の運転士は、子どもの憧れの職業として常に上位に挙げられるものだが、秒単位の正確さを求められ、厳しい環境下で仕事をしていることを初めて知った。同社では、遅れや失敗に対して厳しい罰則規程があるという。『ミスを犯せば罰を与える』というのは、調教するのとあまり変わらないことで、罰を怖れて心が萎縮してしまったり、場合によっては人の尊厳を傷つけることになる。それでは良い感情が湧きはしない。良くない感情は、害になる。害になる感情下では判断力は阻害され、判断力が欠ければ物事は崩壊に導かれる。良い感情を高めながら、いかにミスを無くしていくか。それを考えて指導するのが教育だろう。

 私は、「厳しさと優しさの調和を図った育成を」と常々アドバイスをしている。『厳しさ』というのは、命令や規則で縛ることではない。『優しさ』というのは、甘やかすことではない。厳しく言うべきことは言う。妥協すべきでないことは徹底する。その人のためを思って、あるいは成長を願う心で育成に当たる訳だ。育成する側には、このような毅然として確固たる精神と態度が求められる。

 人育てが上手な人が上司であれば、その人の幸せである。逆なら、悲劇さえ生む。事故を教訓として今後に生かすことが、亡くなられた方々に報いる唯一の方法だ。

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