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田舎にはよく帰るのですが、今回は『伝統的建造物群保存地区』の山村集落を見るという観点で、若い人たちと出かけました(2面に関連記事)。『東祖谷山村』と呼ばれていた私の郷里の村も、近隣の町村との合併で、今年の3月からは『徳島県三好市東祖谷』になりました。市にはなっても、故郷の風景に変わりはありません。向かいの山の中腹に立って、生まれ育った落合集落を眺めてみると、「美しい景色だなあ」と改めて感じます。 数年前から、環境工学や建築史などを専門とする大学教授や学生の人たちが、『伝統的―』のための調査を行っていました。私も両親から調査報告会が行われると連絡を受け、その会に出席するために田舎に帰ったこともあります。自分が生まれ育った故郷がこのような価値を持っているのかと驚くとともに、熱心に詳しく調査してくれていることを嬉しく感じました。特徴的な山村集落として、昨年の暮れに保存地区に選定されました。
保存対象地区には水田が4枚あるのですが、その内の2枚は実家のものです。森林以外の斜面の大部分が畑である中で、水田は珍しい存在です。父や祖父が大事に水田の石積みの手入れをしながら、現在まで残してくれています。我が家の水田の石積みは保存すべき対象物であるそうなので、私も大事に次の代へ残していかなければと思っています。
私が会長をしているNPO法人においても、来期は青少年育成の活動の一環で、この水田を利用した体験学習をしてみようという案が出てきました。中高生のジュニア会員や青年たちは、何度かこの地でサマーキャンプを行っているので祖谷の環境を経験済みですが、小学生以下のジュニア会員はほとんどが知りません。高い周囲の山々や、どこもかしこも急斜面であることや、自分の目線よりもはるか下を鳥が飛んでいる様子に、きっと驚くことと思います。
少し足を伸ばして、最近できた施設にも行ってみました。落合から車でさらに東へ20分ほどの所です。モノレールで山を登りながら森の中を散策するというものですが、正直な感想を述べますと、森はやはり歩くに限るということです。健脚でない人のためには良いかも知れませんが、山や森の空気を味わうにはやや難がありました。モノレールの音や振動で、山や森の静けさを感じ取ることがあまりできませんでした。
私は子どもの頃、一人で森に行くのが好きでした。森の中に入っていくと、頭上高く鳥の声が響いてきます。鳥の声に誘われてふっと見上げると、緑濃い木々の上に青い空が小さく見えていました。遠くから聞こえてくる滝の水音や、風が吹くとわさわさと揺れる木々の葉音も心を落ち着かせてくれました。
今回同行したメンバーの中には、何年か前に同じ旧東祖谷山村の落合峠に登ったことのある人がいました。一面の真っ白い霧の中からかまびすしいほどに聞こえてくる野鳥のさえずりの声が、たいへん印象深く心に残ったと言います。生い茂った笹藪の中からぴょんと飛び出て一瞬でまた笹藪の中に消えた野ウサギも珍しく、良い思い出になったと言っていました。野ウサギを見たのは初めてのことだったそうです。普段は自然とは縁遠いまちの中で暮らす人にとっては、何気ない自然の中の音や色や動物の存在が、何よりも心に残るものとなるのです。
私は、落合集落の景色は心が安らぐ風景だと思っています。裾広がりの安定感ある景色に、きっと癒される思いになることと思います。てっぺんにススキの穂を立てた円錐の肥ぐろも、幾段ものはでに掛けられたそばの束も、自然を求めて田舎にやって来た人にとっては目に焼き付けておきたい風景です。今後、文化財として選定を受けたこの集落を訪れる人も増えるでしょう。ありのままの自然の中で、心安らぐ思い出を作ってくれたらと願います。そして私も、その一助となるような活動ができたらと思っています。めていました。自然の営みに則して作り上げられてきた人類の身体のリズムが、近代化したここ百年ほどの間にそうやすやすと変化するものではありません。夜もこうこうと明かりの灯る現代の生活は、人の心身に無理を生じさせているのです。早寝早起きという当たり前の生活を取り戻した時、少しは落ち着いた社会が再現されるかもわかりません。事は急を要します。
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