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もう7、8年前のことになるでしょうか。愛媛県のある施設を取材したことがありました。児童自立支援施設であるその施設で記念行事があり、式典の様子と子どもたちの学習発表を見学させてもらったのです。同施設は、児童福祉法で各県に設置されているもので、学校や家庭や地域で適応できない子どもや環境上の理由で生活指導が必要な子どもを受け入れています。懸命に子どもたちの指導に当たっている職員の方々や、逆境にありながらも生き生きとそこで生活をしている子どもたちの様子を拝見しました。しかしながら県の数ある施設の中にあって、あまり目立たない存在である印象を受けました。それがえひめ学園を最初に知った時でした。その後、平成16年の台風時には近くの谷川から土石流が押し寄せ、大きな被害を受けたことも聞き及びました。
私が代表をしているNPO法人では、地域づくりや地域社会への貢献活動として、地場産業や県産品の掘り起こしも行っています。その中で出会ったのが、特許製法により微風でも元気に泳ぐ鯉のぼりです。子どもの元気な成長を願って春先から立てられる鯉のぼりは、日本の春を代表する風物詩です。私たちが子どもの頃には唱歌『鯉のぼり』同様に、あちらにもこちらにも屋根の上高く泳ぐ鯉のぼりが見られたものでしたが、市街地ではめっきりとその数が減っています。県産品であって、しかも手軽に立てられるこの鯉のぼりを、何とかもっと多くの人に知ってもらえたらと思っていました。
同NPO法人は、もともと青少年健全育成事業を重要な活動の柱の1つとしている団体でもあります。子どもたちの健全育成を願って、鯉のぼりを県の施設に寄付させてもらうのはどうかと案が上がり、役員らで協議をして会員に寄付を呼びかけるに至りました。端午の節句までにはあまり日数がなく、来年度への持ち越しになるかと思われましたが、せっかくの発案ですから何とか今年に間に合わせてもらうことはできないかと考え、いろいろな方々のご協力を得て働きかけをして頂いて、県内の施設3個所へ寄付をさせて頂くことになりました。
寄贈先を思った時に、真っ先に頭に浮かんだのが前述の施設です。ぜひともそこに鯉のぼりを立てさせてもらいたい、ひれを懸命にかわいく動かして元気に泳ぐ鯉のぼりを、子どもたちに見てもらいたいと思いました。スタッフが鯉のぼりの設置に出向いたところ、園長先生や職員の方々が殊の外喜んで下さったと報告がありました。またそこの子どもたちが、鯉のぼりには縁遠い環境にあることも述べられていたそうです。やはりここに贈らせてもらって良かったと心から思いました。
次の設置場所は、先日オープンしたばかりのえひめ子ども療育センターで、子どもたちが病気や障害のために親元を離れて暮らしていたり、通って来たりしている場所です。見晴らしの良いバルコニーの一角で、元気よく泳いでいます。もう1個所はえひめ子どもの城です。ここは休みの日にはたくさんの家族連れで賑わい、小さな子どもから大人まで楽しむことのできる憩いの場です。花で埋め尽くされた丘にある東屋の横に設置されて、池を見下ろしながら気持ち良さそうに泳いでいました。3箇所ともこの紙面で取り上げたことがあり、縁を感じて寄贈先として提案をしたのでした。
子どもたちのための施設ですから鯉のぼりがない訳ではないでしょうが、そこに思いを馳せている人たちがいることを知ってもらえればと思いました。そして日本の伝統文化である鯉のぼりを、もっと身近に感じてもらえればと思いました。風に向かって一生懸命泳ぐ鯉のぼりのように、どんな環境下にあっても、たくましく元気な心で育ってもらいたいと願っています。多くの人の願いが込められた鯉のぼりです。
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