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   『教育情報』代表コラム (2007年10月)
 自然の恵みに感謝

〜故郷の田んぼで
        稲刈り〜

 9月の下旬、当方の予定より2週間も早く、急きょ稲刈りに出掛けることになりました。稲刈りは10月上旬に行うと計画を立てていたものの、すっかり実っているので、その時期まで待つことはできそうにないとの連絡を実家からもらいました。それで私たちも自然の動きに合わせて、行動することにしたという訳です。
 6月の上旬に子どもたちと一緒に、私の実家(徳島県三好市東祖谷)の田んぼに、『秋田こまち』を植えました。山間の急斜面に開けた私のふる里には、石積みで土留めをした小さな田んぼが4枚しかありません。実家ではその内の2枚で稲を育ててきました。子どもたちや農業には全くの素人の大人たちが、手作業で田植えをしたり稲刈りをするのに丁度良いサイズの田んぼです。平地とはまた異なる体験をしてもらいたいと思い、今年の企画となりました。
 真夏の草取りにも行きたかったのですが、計画していた日の直前に田舎に通ずる川沿いの国道が大きく崩落したために、断念せざるを得ませんでした。その後、迂回路の整備も徐々に進んでいるようなので、マイクロバスやワゴン車を仕立てて出掛けて行きました。
 迂回路は対岸にあって、山道をくねくねと折れ曲がりながら高度を上げ、そしてまた折れ曲がりながら下って行きます。実はこの道には、絶好のビューポイントがあります。私が生まれ育った集落は『伝統的建造物群保存』の地区として登録されているのですが、集落の全容がもっとも良く解るのが対岸からの景色なのです。TV『田舎に泊まろう』で紹介されたように、対岸から見た集落はなかなか絵になる景色です。この景色も、ぜひとも子どもたちに見せたいものの1つでした。
 1枚の田はすでに稲刈りを終えており、子どもたちのためにもう1枚を残しておいてくれていました。今年の稲は、実はしっかりと入っているもののどういう訳か丈が短いそうです。田舎の暮らしでは稲ワラは葬祭に欠かせません。稲を作っている家が2軒しかないものですから、近所の人たちはあてにしてくれているのです。短いワラで用が足りるだろうかと両親が心配をしておりました。
 稲を刈る人、運ぶ人、束ねる人、ハデ(稲木)に掛ける人に分かれて、作業が進みます。持ち場を代わって、さらに作業を進めます。この地の稲木は何段も重ねているのが特徴で、下段から次々と稲が掛けられていきます。私も久し振りにハデによじ登って、子どもたちから手渡される稲を掛けていきました。
 稲をすっかり掛け終わった時に、もう80歳になろうかという父が、ハデの最上段にするすると登ってきて、ビニールカバーを掛けてくれました。最上段は、2階建ての屋根の高さにも匹敵します。昨年大病を患って目もかなり不自由な状態であったのに、嘘のように元気になって、あの高いハデの最上段に登っているのです。
 父はそれまでの生活習慣を変え、節制することを心掛けてこの1年間を過ごしました。そのことを父に納得してもらうために、病院内でつい声を荒げたこともありましたが、捨てたものがあったお陰様で再び健康を得て、命を延ばしてくれています。脱穀の時期が近づいたと、また知らせてくれました。
 何をしても今でこそ便利になっていますが、上り下りするだけでもたいへんな山の生活は、後から思えばかなり不自由で不便極まりないものでした。今でも残る地形的不便さは、たまに訪れる子どもたちにとっては珍しく楽しいものになっています。そして昔ながらの手作業の田植えや稲刈りも、しんどいけれども楽しんで行っています。そのようにしながら先人の苦労を知ったり、自然の営みの不思議を感じたり、自然からの恵みに感謝の心が湧いてきています。『親に感謝 祖先に感謝 常に感謝の心の実践』です。


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