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   『教育情報』代表コラム (2008年6月)
危機感の中で
   知恵を働かす

子どもが変えた
  大人のルール

 今は、どのくらいの割合で集団登校がなされているのでしょうか。集団登校の利点もあれば欠点もあって、賛否両論のようです。昭和30年代、つまり私たちの世代が小学生だった頃は、地方都市や田舎においても、そろそろ交通安全に気を配らなければならなくなくなってきていました。そのような中で生まれてきたのが、集団登校であったのでしょう。ですからほとんどの地域で、集団登校がなされていたのではないかと記憶しています。
 私の生まれ故郷は徳島県の東祖谷ですが、村の小学校では集団の登下校が行われていました。学区内は山あり谷あり川ありで、そこには16の集落がありました。中には、通学に2時間もかかる所もあります。そのような道のりを小さな子どもだけで帰す訳にはいけないので、下校まで集団で行われていたのです。集落単位でまとまって、高学年は低学年の子どもの面倒を見ながら、登下校をしていました。そのことに関して、子どもたちが大人のルールを変えたことがあったことを、つい最近になって思い出しました。
 集落の代表が集まって連絡会を作り、その会にはPTAなどの大人が関与することはなく、全てが子どもたちだけで運営されていました。連絡会は年に数回の集まりがあって、登下校についてもその中で話し合いが持たれていました。私は、その会の中で司会をしたり、出てくるいろいろな意見をまとめたりしていました。
 ある時、道のどこを歩くかで話し合いになったことがありました。それまでは学校の先生や大人からは、山道では川の側は落ちる危険性があるので絶対に歩いてはいけない、と言われていました。車やトラックを避ける時にも、必ず山側に避けるようにと言われていたのです。
 夏休みの終わり頃に、山側を歩いていて、目の前に大きな岩が崩れ落ちてきたという話が出てきました。連絡会に集まった子どもたちは話し合って、川側も危ないし山側も危ないのならどうしようということになって、それならば道路の真ん中を歩こうということに決めました。
 次の連絡会に先生が来られて、子供たちが道路の真ん中を歩くので危ないとトラックのおじさんが言ってきたと、話がありました。注意をしようとする先生に対して、「川側は危ないと言われるし、山側は岩が落ちてきたという話があるし、それではどうしたら良いのですか?僕たちは一生懸命に考えて、どっちも危ないのだから道の真ん中を歩くことにしたんです」と訴えました。子どもなりの考えに先生も理解を示してくれて、それからは車が通っていない時には道路の真ん中を歩いても良いことになりました。
 また子どもたちは話し合って、ここには蛇が出るとか、岩が落ちてくるとか、木が倒れて通りにくいなど、危険な場所には自分たちで看板を作って立てることにもしました。このようにして、自分たちのことは自分たちで守るということを、田舎の子どもは身に付けていきました。環境の中で、子どもも工夫して生きていたのです。人間には知恵があり、危機感の中で知恵を働かせていきます。そのようにしながら『地頭力』が鍛えられていくのだと思います。   
 大人のルールが最善策であると思われていた時代に、子どもの訴えに耳を貸してくれる大人がいたのです。子どもの発案から、それまでのルールが変わりました。子どもが道の真ん中を歩いていても、トラックがクラクションを鳴らすことはありませんでした。
 今の大人たちも、自分の立場から考えたことだけを主張するのではなく、子どもの考えにも耳を傾ける必要があります。子どもも、良い知恵や考えを持っているものです。それを活かして、子どもでも自分を守り、他の人にも理解してもらえるルールづくりができるのです。小学生の頃の事を懐かしく思い出しています。


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