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   『教育情報』代表コラム (2008年12月)
田舎に見る

ボランティアの原点

 特定非営利活動促進法(=NPO法)が施行されて、はや10年が過ぎました。NPOの活動は、行政と民間の狭間にあって、自分たちのできる分野で社会貢献を行っていくというものです。活動を末永く存続させていくには、新しい発想とか緻密な計画も大事ですが、人との連携とか、協力とか、地域との共生を大切にすることが必要でありますし、それこそがNPOの目的であろうと思います。
 昨日は、実家の近所に不幸があり、葬儀に参列するために妻と共に徳島の祖谷に帰りました。10時からと聞いていたので、間に合うだろうかと心配しながら早朝より車を走らせたのですが、着いてみると告別式は12時からとのことでした。時間が間違って伝わったことにより、久し振りに田舎での葬儀の様子をじっくりと目にすることとなりました。最近は田舎でも、町に出てセレモニーホールで式を行うことが多くなっているのですが、今回は自宅での葬儀とあって、集落の人たちが集まって、着々と準備を進めていました。
 集落には、家々でお金を出し合って揃えた葬具一式があり、大切に保管されています。その葬具を運び込むにも、家は道路に面している訳ではないので、家に最も近い地点まで車で運んで、そこから先は人力に頼るしかありません。葬具を運ぶのに人手が足りなくなったと見えて、要請を受けて弟が車まで手伝いに行きました。車を運転する人、荷物を担ぐ人、葬具を組み立てる人など、いわゆる組内の人が仕事を分担して準備を行っていました。
 手伝いの人がいつの間にか集まって準備を行い、式が終わると片付けを済ませていつの間にか帰って行きます。誰が何の役割をすると決められている訳でもありません。できる所に手を出して、手が足りない時には手助けを頼んでいます。田舎には何か事の時には手伝い合う仕組みが昔からあって、それが地域のルールとして現在も続いているのです。
 当家の方から「手伝いに来て下さい」と連絡がある訳でもなく、自ら手伝いを買って出るのです。「何をしたら良いでしょうか」と人に尋ねるのではなく、必要とされる事に対して自ら手を出していくのです。適切に手を出すには、いつ、どこに、どのような事が必要とされるのか、知っておかなければなりません。つまりは情報収集することが大切なのです。
 私は家を出てすでに40年が経っていますが、できることを見付けて、させてもらおうという気持ちでいました。妻も母に割烹着を借りて、食事の準備をしている所に出掛けて行って、手伝いをさせてもらっていました。協力ができる所には自ら手を出していこうとする気持ちが大事であるのです。ボランティアとはこのようなものだろうと思います。
 NPO、あるいはボランティアの活動をする上では、自分が『する』というよりも、『させてもらおう』とする心が大切です。人から言われたからするとか、人から言ってもらわなければできないというものではありません。世間の情報を集めて、必要とされる所や足りていない部分に手を貸していくのです。解らないものがあるなら、頭を下げて人に尋ねれば良いし、自分でできないものがあるならば、協力をしてもらえるよう人にお願いをするのです。そのようにするから、同じ志を持った人、つまり仲間が増えていきます。
 大きな青竹に縄で棺を括り付けて、狭い急な山道を、何人もで担いで車の通る道路まで降りて行きます。それが祖谷の見送りの風景です。この光景は20年余り前に亡くなった祖父の時と少しも変わりがなく、まるで時間が止まったような気がしました。斜面を切り開いた山間の地で、古くからこのようにして互いに力を貸し合って生活をしてきました。少し前までは、どこの地でも見られた近所同士の助け合いです。これぞ、ボランティアの原点です。


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