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4月の下旬、水が引かれた水田がちらほらと目に入るようになって、田植えの時期が近づいたことを知りました。田に水が張られただけで、景色が変わって見えるから不思議です。風が吹くと、水面が光を反射してキラキラと輝いています。良い景色だな、と思います。ゴールデンウィーク中には、あちらこちらで田植えの光景を目にしました。まだ水を引いていない田んぼと田植えの終わった田んぼが混在していて、パッチワークのような風景です。忙しい日々を過ごす中でも、小さな季節の移り変わりを楽しんでいます。
数年前から試みてみたいと思っていたことがあって、今年ようやくそのことが叶いそうです。私が携わっているNPO法人では、青少年健全育成事業の一環として、3年前から祖谷の地で米作りの体験学習を行っています。この地での田植えは、言うならば伝統的建造物郡保存地区という文化財の中での田植えなのです。であるなら、伝統的衣装である早乙女姿で田植えをするのも面白いのではないかと前々から考えていたのですが、そうするに至っていませんでした。
今年こそはぜひともと考え、今、有志が早乙女衣装の準備に当たっています。イベントのレンタル用品で揃えられるのかと思っていたようですが、方々を当たっても無かったそうです。仕方なく、着物集めから始めています。ところが、有るようで無いのが絣の着物なのだそうです。昔は、夏場の家庭着や作業着として、どの家庭でも婦人らが身に付けていたものでしたが、すでに処分をしてしまったという家がほとんどとのこと。反物から仕立てようにも、今では絣も高価でおいそれと手が出ません。
会員らに呼びかけ手分けして探したのが功を奏して、あちらから着物が1枚、こちらから帯が1本というように、少しずつ集まってきています。絣の着物を知らない世代のメンバーが、頭を付き合わせて知恵を絞り工夫を凝らして、菅笠や小物類も次々と揃えています。『三人寄れば文殊の知恵』の如く、実際に見たことのないものを、インターネットで入手した知識を頼りに、見よう見まねで形にしています。
4月の体験学習イベントでは、伝統的建造物郡保存地区と早乙女について、文化や歴史の学習を行いました。その時に、早乙女衣装の一部もお披露目してもらうことにしました。その時に、「おやっ」と思ったことがありました。意図的にモデルを選んだのか、偶然にそうなったのか、1つの筋の繋がりを見ることになりました。
手っ甲や脚絆など小物類を引き受けて縫ってくれているのは、年配の婦人の会員さんです。3人のモデルの中に、娘さんとお孫さんが含まれていました。後で聞くと、前もって着付けの練習をできるのが、その人たちだったからという理由で、当日のモデルになっていたらしいのですが、親、子、孫の3代が、同一線上に並んでいる気がして面白いなと思って眺めていました。
幼稚園や保育園のお遊戯会などの衣装を親が手間暇を掛けて作り、子どもに着させるという話をよく聞きます。それと同じように、田植えという1つの昔ながらのイベントのために、親が一生懸命に作った物を、子や孫が身に付けて披露し、親がそれを見守っているのです。作る方も着る方も、この偶然を感受性豊かに捉え、充実感に持っていくのではないかと感じ、心和む思いがいたしました。
お米は主食で、昔は年貢を米で納めていて、米=金銭でした。また、神棚へも、必ず米を供えます。米は人間にとって、大事な物であり神聖な物であるのです。神社の斎田では、巫女が田植えをしていた名残で、白い衣装の早乙女が登場します。大事な米を作るための最初の儀式が田植えであるからこそ、厳かに、そして楽しく行いたいと思います。早乙女の赤いたすきの色が、祖谷の緑の山々に映えることと思います。
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