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   『教育情報』代表コラム (2010年4月)
未来につなぐ

未来を語る

 徳島の海辺の町を舞台にしていたテレビドラマ『ウェルかめ』を、毎日、楽しみに見ていました。徳島県出身の私としては、視聴率云々はともあれ、地元の名所旧跡が出たり徳島言葉が出たりするので、懐かしく感じられていました。
 またドラマでは、新人が、失敗をしながら苦労をして、少しずつ編集者として成長していく様子が描かれていました。私自身、月に一度の小さな新聞を発行していることもあり、出版社とか、ものを書くということにスポットが当てられているのにも興味を覚えました。編集長の言葉に、「そうだ」と頷くことも多くありました。若い人たちを中心に、未来に向かって展望が広がる形でドラマは終了しました。このドラマのように、若い人たちには、自ら行動し、そして着実に成長してもらいたいと願う気持ちで見ておりました。

 昨年、私は、日頃述べていることをまとめて、1冊の本に著してみました。還暦を間近に迎える年頃になって思うことは、せっかくこれまでに私自身が学んで実践して掴んだことを、次の世代の人たちに着実に受け継いでもらいたいということです。それでタイトルを考えた時に、迷わず『未来につなぐ』と題することにしました。
 今の話、あるいはこれからの話をしようとしているのに、「昔はここはこのようになっていたんだ」とか、「昔はこうだった」というように、過去に引き戻す話をする人がいます。例えば、ふっくらした人が若い頃のことを持ち出して、「昔はスマートだったんですよ」といくら言ったとしても、それは過去のことに過ぎません。そのような時に私は、「私も昔は赤ちゃんだったよ」と言ってみます。そうしますと、昔の話を持ち出した人も気付いて笑ってしまうのです。
 私は、過去のことを語るのではなく、現在のこと、そしてさらに未来につながる話をしていたいと思うのです。過去の花は枯れているのですし、今咲いている花もやがて散っていきます。ですから常に、未来に咲く花の種を探していたいと思うのです。1つの話題も、昔を懐かしがる会話に終わらせることなく、これからの事、未来につながる事を語り合いたいと思うのです。

 坂本龍馬は、歴史上で最も人気のある人物の1人として、よく名前が挙げられます。今年は、NHKの大河ドラマに『龍馬伝』が取り上げられているのが影響して、ことさら坂本龍馬や明治維新のことが話題にのぼります。私はかねてより坂本龍馬に興味を引かれる部分があり、私自身が話をする時に、彼の言葉を引用したり、逸話を盛り込んだりすることがあります。「日本を今一度洗濯いたし申し候」と姉への手紙に書いたことや、たとえ倒れることがあっても、その時には必ず前を向いて倒れると言った話など、特に心に残しています。
 坂本龍馬が後世の人たちに影響を与え、これほどまでに人気があるのは、前向きで、いつも将来を見ようとしていたからではないかと思うのです。坂本龍馬は明治維新の基礎を作ったと言われていますが、明治維新が成し遂げられたのは、未来を語った人間がいたからなのです。若き彼らは、日々、「日本の未来は、こうあるべきだ」とか、「変化しなければ将来は危うい」と、熱く語っていたのだろうと思います。これからの時代を憂い、そして夢見た若者たちがいて、そしてそれに同調し、協力をする人たちが変革を求めて共に行動に出たから、明治維新という歴史的大事業が達成された訳なのです。

 明日を語る人と、過去の中で生きている人と、どちらのタイプの人と話をしたいかと言えば、前者のような人でありましょう。「こういう事をしましょう」、「このような事をしてみませんか」と語り合う人が増えてくると、世の中は前に進んでいきます。先を見ようとする人、要するに、未来を語る人がいるから人は進歩し、進化していくのだと思っています。


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